「●人事マネジメント全般」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【703】 寺崎 文勝 『ニート世代の人事マネジメント』
人事は「人」でなく「事」を見よ。同じアジア人の立場から「日本的人事」を批判。
『これしかないよ日本の人事』 (2006/01 ビジネス社) 『やっぱり変だよ日本の営業―競争力回復への提案』 〔'02年〕
ソフトブレーン株式会社創業者で、営業支援ソフトを開発する一方、『やっぱり変だよ日本の営業』('02年/日経BP企画)などの著書で、日本の営業の現場の非効率性などを指摘してきた著者が、今度は「日本の人事」のあり方を批判したもの。
著者に言わせれば、日本企業にはまだまだ右肩上がり経済の"良き時代"の残滓が見られるとのこと。それは、①会社は家である という意識、②減点主義人事、③結果平等を旨とする、の3点セットとして表れており、これを「会社は経済活動の場である」というように意識転換し、加点主義人事、機会均等主義で臨まない限り、企業はやっていけなくなると。
業績がストレートに評価に繋がる人事の計算式をつくり、個人的な好みや情を絡めず、人事は「人」でなく「事」を見よ、という指摘はわかりやすいものです(意識しないでいるとついつい「人」を見て判断してしまいがちであり、それだけに、「人事」という言葉に絡めての「『人』でなく『事』を見よ」というフレーズは、念頭に置くべき座右の銘として簡潔でいい)。
これからの人事は、成果主義を基本にせざるをえず、そのためには社員レベルでは「個の自立」が、社会的に「人材の流動化」が必要であると。著者の目から見ると、日本の会社員はまだまだ個が自立していないように見えるようです。
会社側に対しても、成果主義を導入するならば、社員に忠誠心など求めるな、と言っています(評価項目にやる気とか頑張りといった要素があれば削除せよとも)。
若年層に対する成果主義の徹底導入を勧めている一方で、マネージャーに対しては人間性などを見よといている点が興味深く、また「成果主義100%」は失敗するとも言っていますが、これはリザルト・マネジメント(結果主義)では不十分で、プロセス・マネジメントをしっかりやれということでしょう。
なにゆえに外国人からいろいろ指摘されなければならないのかという思いを抱く読者もいるかも知れませんが、日本で実業を立ち上げた人の言葉だけに説得力があり、同じアジア人である日本人と中国人の会社観の違いなどもわかって面白かったです(中国人は欧米人以上に成果主義的かも)。
《読書MEMO》
●会社にも社員にもそれぞれの事情があり、両者が100%満足できるような人事システムは現実にはありえない。そこで大切なのは「納得感」ということになる(116p)
●「3つのマネジメント戦略」...①仕事の設計図を書く、②部下を評価する、③結果に責任を負う、「3つのマネジメント戦術」...①働く環境づくり、②ヒントを出す、③応援体制づくり(171p)
●人事評価の原則=マネージャーの場合
・個人成績より率いるチームの業績を重視(チーム成績はマネージャーの人間性など「人」の部分が関わった結果として、数字がでてきたもの)
・部下たちが「数字80%、人20%」なら、マネージャーは「数字50%、人50%」の比重(172p)