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導入部分がいい。状況設定が昔流行ったST(感受性訓練)と似ている?
『11人いる!―SFロマン傑作選 (小学館文庫 (712))』(1976/01 小学館文庫)
『11人いる! (小学館文庫)』〔'94年/新編集版〕
『11人いる! (フラワーコミックススペシャル 萩尾望都パーフェクトセレクション 3)』('07年/小学館)
1975(昭和50)年の「別冊少女コミック」9月号~11月号が初出誌。1975(昭和50)年・第21回「小学館漫画賞」(少年少女部門)受賞作(「ポーの一族」と併せて受賞)。
宇宙の最高学府「宇宙大学」入試の最終試験として、1つの宇宙船につき10人のグループで53日間過ごすという課題が出されるのだが、主人公の乗り込んだ宇宙船には何故か11人いた。爆発事故やウィルス発生などのトラブルが船内で続発するが、それも試験のうちなのか、11人目の誰かの仕業なのかわからない。彼らは互いに疑心暗鬼を抱きながらも、接近し協働して課題をクリアしようとする―。
小中学生の頃からアシモフ、クラーク、ハインライン、F.ブラウンなどのSFを読みふけったという作者らしい作品で、読者を引き込む状況設定が巧いなあと思いました。
'60年代から'70年代にかけて企業研修などで流行った「エンカウンターグループ」や「ST(感受性訓練)」などと少し似ていると思いました(しかしあのSTブームは何だったのか。福本博文氏の体験ルポ『心をあやつる男たち』('93年/文藝春秋、'99年/文春文庫)によると死者まで出たとか)。このマンガが発表されたのが'75(昭和50)年ですから、「試験」と「研修」の違いはありますが、作者はその辺りから着想したのではないかと思ったりもしました。
『心をあやつる男たち (文春文庫)』['99年]
この『11人いる!』は『ポーの一族』と併せて小学館漫画賞を受賞していて、『トーマの心臓』などとともに作者の代表作であるには違いないでしょう。11人のキャラクターが限られた紙数の中でよく書き分けられています。ただ、ミステリーにはありがちなことですが、導入部分が素晴らしい分、結末の凡庸さに落差を感じました。
この作品は、'86年にアニメ映画化されていますが、それ以前、'70年にNHKの少年ドラマシリーズ(1972年~1983年)の一環として全1回40分のドラマとして実写化されたものが放映されており、DVDも発売されています(個人的には共に未見)。
NHK少年ドラマシリーズ「11人いる!」(1977年1月2日放送)脚本:佐々木守 出演: 山城はるか/佐山泰三/吉田次昭/柴崎敏/片岡功/保積ぺぺ/中村俊男/蔵忠芳/山田昌人/三ツ矢雄二/石垣恵三郎/佐藤慶(宇宙大学学長)
「11人いる! [DVD]」
【1976年文庫化[小学館文庫(『11人いる!―SFロマン傑作選』)]/1978年全集[小学館(『萩尾望都作品集〈13〉』(プチコミックス))]/1986年単行本[小学館]/2007年単行本[小学館フラワーコミックススペシャル]/1994年文庫新編集版[小学館文庫]】