【687】 ○ Eric Carle 『Papa, Please Get the Moon for Me』 (1986/04 Simon & Schuster) 《 エリック・カール (もり ひさし:訳) 『パパ、お月さまとって!』 (1986/11 偕成社)》 ★★★★ (○ 『Dream Snow』 (2000/09) ★★★★)

「●海外絵本」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1144】L・クリスチャンソン『わたしのせいじゃない
「○海外児童文学・絵本 【発表・刊行順】」の インデックッスへ

「折り返しはこうして使え」というお手本みたいな絵本。「青」系の色使いがいい。

パパ、お月さまとって 英語.gif パパ、お月さまとって.jpg        ゆめのゆき 英語.bmp ゆめのゆき 日本語.jpg 
Papa, Please Get the Moon for Me』『パパ、お月さまとって!』/『Dream Snow』『ゆめのゆき

パパ、お月さまとって!.jpgEric Carle.bmp 1986年にアメリカの絵本作家 Eric Carle (エリック・カール)が発表した絵本で、原題は"Papa, Please Get the Moon for Me"

 鮮やかな彩色に独特のコラージュというお馴染みの方法をとりながらも、青い夜空にコラージュされた銀白色の月は、他の多原色使用のカラフルな作品とはまた異なる味わいです。

 月と遊びたいというモニカの願いに応えようと、パパがとても長いはしごを登って月をとりにいく話ですが、パパの奮闘に沿って、これでもか、これでもか、という感じで折り返し絵本が拡大していくのが楽しく、「折り返しはこうして使え」というお手本みたいです。

 月の満ち欠けがモチーフで科学絵本の要素もありますが、この折り返しの仕掛けで2歳ぐらいから楽しめるのではないでしょうか。

 父親が読み聞かせてもしっくりくる内容ですが、1929年にアメリカのドイツ系移民の家庭に生まれた作者は、6歳で家族とドイツに移った後、父親が第二次世界大戦で召集され終戦後シベリア抑留となり、10歳から18歳までの間は父親と会えなかったそうです。

はらぺこあおむし/だんまりこうろぎ2.jpgThe Very Hungry Caterpillar.jpgだんまりこおろぎ.jpg 初期作品の『はらぺこあおむし』(The Very Hungry Caterpillar '69年発表)が有名ですが、『だんまりこおろぎ』(The Very Quiet Cricket '90年発表)もそれに並ぶ人気で、英語版は共に子供の"洋書デビュー"にもよく選ばれているようです。

The Very Hungry Caterpillar』/『The Very Quiet Cricket
 
 『だんまりこおろぎ』の方も、「音の出る仕掛けはこうして使え」というお手本みたいな作品で、それでいて多分マネできる作家はいないだろうなあと言う感じ。

 また、エリック・カールというと、イタリアっぽいカラフルな色合いをイメージしがちですが、この『パパ、お月さまとって!』は「青」が基調で、この「青」がなかなかいいです。

 2000年に発表した『ゆめのゆき』(Dream Snow)では、この「青」が更に深みを増して「群青」に近くなっていて、これもいい感じ。

ゆめのゆき.JPG 小さな農場で5匹の動物を飼い、毎日一生懸命世話をしていたおじいさんが、ある晩に夢を見て、夢の中ではキラキラ光る雪が降り、おじいさんや動物たちを雪の白い毛布でやさしく覆う。「あっ そうだ!もうすこしでわすれるところだった」とおじいさんは身支度をして箱を持ち、袋を背負って外へ出て、木箱から動物たちへのプレゼントを取り出し、木に飾り付けを終わると、大きなきな声でみんなに「メリークリスマス!」という―。

 クリスマス絵本であるわけですが、動物達が雪の白い毛布で覆われるところでそれぞれのページの前に白で雪を描いた透明のビニールページが挟んでり、それでそれぞれの動物が雪で覆われているように見え、雪のページをめくると馬、牛、羊、豚、鶏の動物達が現われる、という仕掛けが楽しいです(この動物たちの背景の色調は従来のカラフルなトーン)。

 これも、『だんまりこおろぎ』同様、最後のページにスイッチがあり、これを押すと、鈴の音が流れる仕掛けになっています(我が家では、クリスマスシーズンには最後の見開きページを開いて、ツリーの傍の書棚の上に置いている)。

 『パパ、お月さまとって!』の日本語版初版も原著と同年('86年)の刊行ですが、手元にある日本語版(2003年版)で第82刷なので、もすぐう100刷を超えるのでは...。

1 Comment

『はらぺこあおむし』をはじめとする数々の名作を世に送り出してきたエリック・カール氏が、2021年5月23日、マサチューセッツ州ノーサンプトンにある自身のスタジオにて、家族に囲まれながら静かに息を引き取りました。91歳でした。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1