【612】 ○ 平岩 弓枝 『御宿かわせみ (上・下)』 (1980/08 文藝春秋) 《『江戸の子守唄』 (1979/04 文春文庫)/『水郷から来た女』 (1980/10 文春文庫)/『山茶花は見た見た』 (1980/11 文春文庫)》 ★★★★

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第1話は異色作。大川端でなく柳橋にあった「かわせみ」。後に3歳修正された"るい"の年齢。

御宿かわせみ 上.jpg 御宿かわせみ 下.jpg    御宿かわせみ.jpg 江戸の子守唄.jpg 水郷から来た女.jpg 山茶花は見た.jpg
単行本『御宿かわせみ〈上・下〉 (1980年)』/文庫新装版『御宿かわせみ〈新装版〉 (一) (文春文庫)』『御宿かわせみ〈新装版〉 (二) (文春文庫)』『水郷から来た女―御宿かわせみ 3 (文春文庫)』『山茶花は見た―御宿かわせみ〈4〉 (文春文庫)』(装丁:蓬田やすひろ)

 元同心の娘で、江戸大川端の宿屋「かわせみ」の女主人"るい"と、その幼馴染みで、八丁堀の与力を兄に持つ東吾の2人の恋を軸に、市井に起きる数々の事件を下町情緒を交えて描いた人気シリーズの第1話から第33話までを収録していて、シリーズ第1作から第4作(『御宿かわせみ』、『江戸の子守唄』、『水郷から来た女』、『山茶花は見た』)の合本です。

 雑誌連載のスタートは'73(昭和48)年だったということで、池波正太郎の「鬼平犯科帳」シリーズのスタートと5年ぐらいしか違わないのですが、今風で読みやすく、人情とサスペンスがほどよく相俟って読後感もいいです。
 ただし、第1話の「初春の客」などは、日蘭混血遊女と黒人奴隷の凄絶な恋の行方を描いた異色の"道行き"物語で、このシリーズの標準的なトーンとは随分違って暗い感じ。でも、これはこれで、心に残る話でした。

 第1話、第2話では「かわせみ」が大川端ではなく、少し川上の柳橋に在る設定になっていたことに気づきますが、それよりも"るい"の年齢が25歳になっていて、東吾は24歳(33話までには彼女は29歳ぐらいになっている)、'04年刊行の新装文庫版で、"るい"の年齢が22歳からスタートしているのとの違いがわかります。
 しっかりした性格の中にも可愛らしさを見せる"るい"の年齢は25歳である方が自然で、22歳だと東吾は21歳ということになり、2人とも大人びていすぎる感じがします。

 実際にそこは作者の計算で、江戸時代の感覚では女性は16ぐらいが花で20ぐらいだと嫁に行き遅れみたいな感じだったようですが、それでは現代の感覚と合わないので、最初は敢えて"るい"の年齢を25歳にしたとのこと。
 ところが連載が好評で、「時が流れる」スタイルをとっているため、このままでは"るい"がどんどん年齢を重ねてしまうので、35話で彼女の年齢を29歳から3歳戻して26歳にし、それに伴って第1話のときの年齢を25歳から22歳に修正したとのこと。
 結果的に、現代の年齢感覚から江戸時代の感覚に戻したということでしょうか。

 嘉助やお吉など、"るい"をとりまく人たちがいい人すぎるきらいもありますが、スリ"休業中"(廃業はしていない)という美男子の板前「お役者松」などのユニークなキャラクターがアクセントになっていたりして、飽きさせないものがあります。

御宿かわせみ 選集 第一巻 [VHS].jpg御宿かわせみ 真野響子版.bmp この「御宿かわせみ」は何度も単発乃至シリーズでテレビドラマ化されており、若尾文子、真野響子、古手川祐子、沢口靖子、高島礼子といった女優が"るい"役を演じています。
 最近では、NHKの高島礼子版が、明治期までを演じていたりしますが、同じNHKの真野響子版も懐かしい(東吾とるいは、正式な夫婦になっていないところが良かったんだよなあ)。
     
御宿かわせみ 選集 第一巻 [VHS]」真野響子/小野寺昭

御宿かわせみ 山口崇2.jpg御宿かわせみ 山口崇.jpg「御宿かわせみ」●演出:佐藤幹夫/松橋隆/清水満●制作:村上慧●脚本:加藤泰/伊上勝/大西信行●音楽:池辺晋一郎●原作:平岩弓枝●出演:真野響子/小野寺昭/山口崇/田村高広/河内桃子/安奈淳/花沢徳衛/水原ゆう紀/織本順吉/結城美栄子/大村崑●放映:1980/10~1981/03/1982/10~1983/04(全48回)●放送局:NHK
山口崇(東吾の親友の定廻り同心・畝源三郎)
 
 【1974‐77年単行本〔毎日新聞社(『御宿かわせみ』『江戸の子守唄』『水郷から来た女』『山茶花は見た』)]/1980年単行本〔文藝春秋(上・下)]/1979‐80年文庫化・2004年文庫新装版[文春文庫]】

平岩弓枝.jpg平岩弓枝(ひらいわ・ゆみえ)2023年6月9日間質性肺炎のため東京都内の病院で死去。90歳。 作家・脚本家。小説「御宿かわせみ」シリーズやテレビドラマ「肝っ玉かあさん」の脚本などで知られ、文化勲章を受章した。

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This page contains a single entry by wada published on 2007年3月30日 22:57.

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