【588】 ○ 真保 裕一 『ホワイトアウト (1995/09 新潮社) ★★★★ (△ 若松 節朗 「ホワイトアウト (2000/08 東宝) ★★★)

「●さ行の現代日本の作家」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【589】 真保 裕一 『繫がれた明日
「●「吉川英治文学新人賞」受賞作」の インデックッスへ 「●「このミステリーがすごい!」(第1位)」の インデックッスへ 「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ 「●佐藤 浩市 出演作品」の インデックッスへ 「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

ハリウッド映画を思わせるスケールの大きい状況設定。

ホワイトアウト.jpgホワイトアウト 1995.jpg  ホワイトアウト文庫.jpg ホワイトアウト2.jpgホワイトアウト 映画ド.jpg
ホワイトアウト』['95年]/新潮文庫〔'98年〕/「ホワイトアウト<初回限定2枚組> [DVD]

 1995(平成7)年度・第17回「吉川英治文学新人賞」受賞作。1996 (平成8) 年「このミステリーがすごい」(国内編)第1位(1995(平成7) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(国内部門)第2位)。

 日本最大の貯水量の「奥遠和ダム」を武装グループが占拠し、職員、麓住民を人質に50億円の身代金を要求するという、映画でも良く知られるところとなったストーリーです。

 スケールの大きい状況設定は、ハリウッド映画を思わせるものがあり、吹雪の様子などの描写が視覚的で、尚更そう感じます。作者は、アニメ制作会社でアニメの演出などをしていたそうですが、なるほどという感じもしました。ダムの構造の描写などにも作品のテンポを乱さない程度に凝っていて、この作者は"理科系"というか"工業系"の感じがしますが、臨場感を増す効果をあげています。アクション・サスペンスの新たな旗手の登場かと思われる作品ではありました(その後、純粋なアクション・サスペンスはあまり書いてないようだが...)。

WHITEOUT ホワイトアウトド.jpg ただ、アクション・サスペンス的である分、人物描写や人間関係の描き方が浅かったり類型的だったりで、映画にするならば、役者は大根っぽい人の方がむしろ合っているかも、と思いながら読んでました。結局のところ映画は織田祐二主演で、体を張った(原作にマッチした)アクションでしたが、演技の随所に「ダイハード」('88年/米)のブルース・ウィリスの"嘆き節"を模した部分があったように思ったのは自分だけでしょうか。

映画「ホワイトアウト」 ('00年・東宝)

ホワイトアウト 映画 佐藤浩市.jpg映画「WHITEOUT ホワイトアウト」 松嶋.jpg 織田祐二はまあまあ頑張っているにしても、テロリスト役の佐藤浩市の演出が「ダイハード」のアラン・リックマンのコピーになってしまっていて、自分なりの役作りが出来ていないまま映画に出てしまった感じで存在感が薄く、人質にされた松嶋菜々子に至っては、別に松嶋菜々子を持ってくるほどの役どころでもなく、客寄せのためのキャスティングかと思いました。    

奥只見ダム.jpg 奥只見ダム(重力式ダム) 黒部ダム.jpg 黒部ダム(アーチ式ダム)

 細かいことですが、本作の舞台である日本最大の貯水量を誇る「奥遠和ダム」のモデルとなったのは奥只見ダムであると思われますが、映画では「奥遠和ダム」はアーチ式ダムという設定になっているため(奥只見ダムはアーチ式ではなく重力式ダム)、撮影の際にダムの外観のショットは、アーチ式の黒部ダムなどで撮っています(原作の中身は重力式ダムという設定、単行本の表紙写真は奥只見ダムのものと思われる)。映画化するならば、アーチ式ダムの方がビジュアル面で映える、という原作者の意向らしいですが、確かにそうかも。さすが、もとアニメ演出家。

WHITEOUT ホワイトアウト .jpg映画「WHITEOUT ホワイトアウト」0.JPG「ホワイトアウト」●制作年:2000年●製作:角川映画●監督・脚本:若松節朗●脚本:真保裕一/長谷川康夫/飯田健三郎●音楽:ケンイシイ/住友紀人●撮影:山本英夫●原作:真保裕一●時間:129分●出演:織田裕二/松嶋菜々子/佐藤浩市/石黒賢/吹越満/中村嘉葎雄/平田満●劇場公開:2000/08●配給:東宝 (評価★★★)

 【1998年文庫化[新潮文庫]】

About this Entry

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1