【587】 ○ 城山 三郎 『打たれ強く生きる (1985/01 日本経済新聞社) ★★★☆ (○ 城山 三郎 『聞き書き 静かなタフネス10の人生 (1986/06 文藝春秋) ★★★☆)

「●し 城山 三郎」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒「●せ 瀬戸内 寂聴」 【3086】 瀬戸内 寂聴 『奇縁まんだら 続
「●「朝日賞」受賞者作」の インデックッスへ(城山三郎)「●「菊池寛賞」受賞者作」の インデックッスへ(城山三郎)

著名人のエピソードを軸とした読みやすいエッセイ。とりあげられている人物がバラエティに富む。
打たれ強く生きる.jpg 『打たれ強く生きる (新潮文庫)』〔'89年〕 静かなタフネス10の人生.jpg 『静かなタフネス10の人生』 新潮文庫

打たれ強く生きる 単行本_.jpg 『打たれ強く生きる』 ('85年/日本経済新聞社)は、財界人などの著名人の素顔や言動から窺えるその人間性や考え方などを中心に、著者が日常において感じたことなども含めてエッセイ風に綴ったもので、ベースとなっているのは'83(昭和58)年の日経流通新聞での連載。1篇3ページずつにまとまっており、読みやすいせいもあって、今まで何度か読み返しました。
静かなタフネス4.JPG 城山氏は財界トップへのインタビューなども本にしていますが(『静かなタフネス10の人生』('86年/文藝春秋))、本書『打たれ強く生きる』でも、渋沢栄一とか城山氏の好みの経営者にまつわるエピソードが多いものの(本田宗一郎や土光敏夫などはまだ本書刊行時は存命中で、著者は直接に親交があった)、財界人に限らず、歴史上の人物(毛利元就・山中鹿之助など)から、作家や演出家(和田勉・浅利慶太など)、さらには芸人・芸能人(桂枝雀・レオナルド熊など)まで取り上げていて、より作家的視点を感じるとともに、話のネタの広さに感心します。

聞き書き 静かなタフネス10の人生

 "山種証券"の山崎種二氏の「大きな耳を持て」という話や、"花王石鹸"の丸田芳郎の「会社の仕事以外に勉強するように」「文学や芸術に触れろ」という話はいい話ですが、ちょっとストレートすぎる感じも。

 むしろ、地方から家出同然で上京した村上龍に、父親が近況を伝える手紙を送り続けたという(その数7年間で2千通に及び、これに対して村上龍は一度も返信しなかったという)話などが、読み直して新鮮な面白さを感じました。

桂枝雀.jpg 表題の「打たれ強く生きる」については、作家・渡辺淳一が、医師としての死生観を通じて得た「死を思えば少々の挫折など何でもない」という「打たれ強さの秘密」という話の中で出てきます。
 更にその前に紹介されている落語家・桂枝雀の「ぼちぼちが一番でんな」という話も印象的でしたが、彼自身は、自分が気質的に考え込んでしまうタイプだということがよくわかっていたのでは。 

 【1989年文庫化[新潮文庫]】

1 Comment

城山三郎(本名・杉浦英一)2007年3月22日、呼吸不全で死去。79歳。

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1