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『ぼんくら2』。江戸市井の人情や風俗が楽しめるが、弓之助が少し活躍し過ぎでは。
『日暮らし(上・下)』講談社文庫/『日暮らし 上・下』/『ぼんくら』('00年/講談社)(表紙絵:村上 豊(1936-2022/86歳没))
同心・井筒平四郎が事件の解決にあたる『ぼんくら』('00年/講談社)の続編で、最初の方は前作同様、小事件を人情譚に絡めて描く連作短編のスタイルですが、それが途中から展開していくメインの事件の背景にもなっています。
『ぼんくら』のストーリーをも受け継いでいるし、『ぼんくら』では長屋のシステムなどの説明もキッチリされていたので、やはり『ぼんくら』から読んだ方が楽しめるには違いないと思います。
最初は、家庭内での夫婦の心の行き違いやストーカーを懲らしめる話など、事件としては小粒ながらもホロリとする話が続き、このまま人情譚でいくのかと思うと、メインとなる事件では犯人探しに焦点が集まるようになっていて、人の心に棲む鬼のような情念をしみじみと描くうまさは、やはり著者ならではのものです。
おどろおどろしい事件ですが、その解決を通して人の心の温かさが伝わってくるのは『ぼんくら』や『あかんべえ』('02年/PHP研究所)と同様で、随所に描かれる江戸市井の人々の暮らしぶりや食べ物にまつわる話などの江戸風俗も楽しめました。
楽しいし読みやすいけれども、どちらかと言えば上巻の方が面白い。本当は下巻にいくにつれて盛り上がるべきなのだろうけれど、オチもやや唐突な気がしましたし、天才美少年・弓之助少年が少し活躍し過ぎて、ここまでくるとジュブナイル小説のノリではないかと...。「名探偵コナン」とダブりました。前作と併せてラジオドラマ化もされましたが、弓之助の声は高山みなみさん(コナンの声優)が担当していたし...。
【2008年文庫化[講談社文庫(上・中・下)]/2011年文庫新装版[講談社文庫(上・下)]】
画家・村上豊(むらかみ・ゆたか)2022年7月22日、病気のため死去。86歳。 司馬遼太郎。藤沢周平、宮部みゆき作品などの挿画を担当。