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「スーパー歌舞伎」でお馴染みの原作のマンガ化。面白い。「古事記」が身近に。
『ヤマトタケル』(1987/12 角川書店)/コミック版[あすかコミックス(上・下)]「コナン DVDスペシャルBOX」「映画パンフレット「ミラクルマスター-七つの大冒険-」」
'86(昭和61)年12月号から翌年7月号にかけて雑誌「ASUKA」に連載された、ヤマトタケルを主人公とした作者の古代史モノ作品の1つで、原作は、梅原猛が三代目市川猿之助の「スーパー歌舞伎」のために書き下ろしたものです。
兄の大碓命(おおうすのみこと)を偶然殺してしまった小碓命(おうすのみこと)は、父天皇に疎まれ、熊襲(くまそ)討伐を命じられる。叔母から貰った「草薙の剣」を携え、熊襲を征した彼は、ヤマトタケルと呼ばれるようになる。さらに今度は蝦夷(えみし)討伐を命じられ、弟橘(おとたちばな)を妻としたタケルは、「草薙の剣」をもって蝦夷を征するが、途中で弟橘を失い、伊吹山で天皇の配下に追い詰められる―。
これぞまさに日本最古の悲劇的英雄を描く壮大な叙事詩といったところ。こうして見ると、ヤマトタケルの辿った運命はちょっと源義経と似たところがあるあなとか思いつつ、一気に最後まで読みました。ハードカバーに相応しい内容。面白いし、日本神話の勉強にもなります(梅原猛氏の歴史解釈は多分に恣意的であると思われるが)。
梅原 猛(1925-2019)
この作者にしては珍しく、主人公のタケルがマッチョに描かれてる点が目を引きますが、アーノルド・シュワルツェネッガーとかシルヴェスター・スタローンの写真やビデオを参考にしたとのことです。アーノルド・シュワルツェネッガーの「コナン・ザ・グレート」('82/米)は絶対に参照しているなあ。
ストーリーの方は、一応は梅原猛の原作を踏襲しながらも、タケルが女装して熊襲の頭領を欺く場面では、タケルの代わりに従者のタケヒコに女装させたりして(タケルをマッチョにしてしまった関係もあるのだろうが)、かなり柔軟に翻案されています。
ヤマトタケルには戦争における軍神としてのイメージがあるし、弟橘を初めこの物語における女性の描き方が、男社会における男にとって都合のいい女性像ではないかとの指摘もあります。 弟橘は共同体のために犠牲になる個人、つまり人柱(ひとばしら)の象徴ともとれます。
いろいろな見方はでき、個人的には梅原猛氏の歴史観そのものにも多々疑念を持っていますが(歴史家ではなく作家と見るべき)、こうして「古事記」を身近に感じることができるメリットというのはそれなりあると思いました。
「コナン・ザ・グレート」('82/米)は、アーノルド・シュワルツェネッガーの映画本格的デビュー作で(映画初出演作は「SF超人ヘラクレス」('69年)のヘラクレス役で、アーノルド・ストロングという名義でクレジットされている)、ジョン・ミリアスとオリバー・ストーンの共同脚本ですが、シュワちゃんは肉体は大いに披露するものの、まともなセリフは少ないです(似たような体格のスタントマンがいなかったため、スタントも自らこなすなどして頑張ったが、ラジー賞の"最低男優賞"になってしまった。一方、共演のサンダール・バーグマンは、ゴールデングローブ賞の年間最優秀新人賞に)。
アーノルド・シュワルツェネッガー(ジョン・ミリアス監督)「コナン・ザ・グレート」(1982)
なぜ、あのアーノルド・シュワルツェネッガーの本格デビュー作がこのような作品になってしまったかというと、おそらく当時は演技力に関しては全く未知数であったということと(肉体美の方は確かだったが)、そもそも当時この手の古代冒険活劇譚とでも呼ぶべき映画が流行っていたということもあったのではないかと思われます。「ジョーイ」('77年)のマーク・シンガー、「カリフォルニア・ドリーミング」('79年)のタニア・ロバーツ主演の「ミラクルマスター 七つの大冒険」('82年/米・伊)などもその類でした。コレ、「桃太郎の鬼退治」みたいな話だったなあ。最初のお供は雉ならぬ鷲と愛犬、途中からフェレットとか加わったりしたけれど。過去にビデオ化はされましたが、その後'06年現在DVD化されていないため、ある種カルト・ムービー化している作品かもしれません。
「Beastmaster」[Soundtrack]
「コナン DVDスペシャルBOX」
「コナン・ザ・グレート」●原題:CONAN THE BARBARIAN●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ミリアス●製作:バズ・フェイシャンズ/ラファエラ・デ・ラウレンティス●脚本:ジョン・ミリアス/オリバー・ストーン●撮影:キャロル・ティモシー・オミーラ●音楽:ベイジル・ポールドゥリス●原作:ロバート・E・ハワード「英雄コナン」●時間:128分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェームズ・アール・ジョーンズ/サンダール・バーグマン/マックス・フォン・シドー/ベン・デイヴィッドスン/カサンドラ・ギャヴァ/ジェリー・ロペス/マコ岩松●日本公開:1982/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿ローヤル(83-04-30)(評価:★★☆)
マックス・フォン・シドー(オズリック王)
「ミラクルマスター 七つの大冒険」●原題:BEASTMASTER●制作年:1982年●制作国:アメリカ・イタリア●監督・脚本:ドン・コスカレリ●製作:バズ・フェイシャンズ/ラファエラ・デ・ラウレンティス●脚本:ポール・ペパーマン/ シルヴィオ・タベット●撮影:ポール・ペパーマン●音楽:リー・ホールドリッジ●原作:ロバート・E・ハワード「英雄コナン」●時間:118分●出演:マーク・シンガー/タニア・ロバーツ/リップ・トーン/ジョン・エイモス/ジョシュア・ミルラッド/ロッド・ルーミス/ベン・ハマー●日本公開:1983/10●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿東急(83-10-16)(評価:★★☆)
「映画パンフレット 「ミラクルマスター-七つの大冒険-」 出演 マーク・シンガー/タニア・ロバーツ」
タニア・ロバーツ in「カリフォルニア・ドリーミング」('79年)「シーナ」('84年)「007 美しき獲物たち」('85年)
新宿東急 1956年(昭和31年)12月、歌舞伎町「東急文化会館」(現・東急ミラノビル)地階にオープン(右写真:1960年ミラノ座新館開業時)→「新宿ミラノ2」2014(平成26)年12月31日閉館。
新宿東急ミラノビル4館(シネマミラノ・ミラノ座・新宿東急・シネマスクエアとうきゅう)2005年8月
【1991年コミック版[あすかコミックス(上・下)]/2011年潮出版社[山岸凉子スペシャルセレクション 10]】
梅原猛(うめはら・たけし)2019年1月12日、死去。93歳。