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だらだらと気楽に読め、ときどきニンマリさせられるシリーズ。
新潮文庫(イラスト:安西水丸)『村上朝日堂はいほー!』['89年/文化出版局]
著者のエッセイシリーズ「村上朝日堂」は、だらだらと(?)気楽に読め、ときどきニンマリさせられるようなことが書かれている点が好きなのですが、本書も、「白子さんと黒子さんはどこに行ったのか?」とか、「村上春樹のクールでワイルドな白日夢」など、まずタイトルからして引きつけられます。
「村上朝日堂」シリーズを初期のものから刊行順に並べると、ざっと次のようになります(『日出る国の工場』('87年/平凡社)も「新潮文庫」では一応このシリーズに入っているようです)。
◆『村上朝日堂』('84年/若林出版企画)'82〜'84年「日刊アルバイトニュース」連載
◆『村上朝日堂の逆襲』('86年/朝日新聞社)'85〜'86年「週刊朝日」連載
◆『村上朝日堂はいほー!』('89年/文化出版局)「ハイファッション」連載のエッセイが中心('83〜'88年)
◆『うずまき猫のみつけかた-村上朝日堂ジャーナル』('96年/新潮社)'94〜'95年「SINRA」連載
◆『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』('97年/朝日新聞社)'95〜'96年「週刊朝日」連載
これを見ると、「週刊朝日」の「週刊村上朝日堂」の連載には著者の海外移住のため約10年のブランクがあり、本書『はいほー!』は、最後に日本で書いたエッセイ集というところでしょうか。雑誌掲載の35編から23編を選んでそれに他誌に書いたものなど8編を加えた31編で構成されていますが、連載の途中から「海外生活」に入ることになり、出発前の"一挙7本書き"というのもやったらしいです。
「『うさぎ亭』主人」のような、行きつけの定食屋さんでぜんまいの煮物を食べた話のすぐ後に、ビリー・ホリデーの話や「チャールストンの幽霊」みたいな話がくるのが、この時期らしく、また著者らしいです。
シリーズの他の本が最初から安西水丸氏とのタッグなのに対し、本書単行本のイラストは高橋常政氏で(新潮文庫版では安西水丸氏)、これだけでも他と雰囲気が違ってくるのが面白いですが、体裁も 『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』('87年/文藝春秋)などと同じペーパーバックス(B6縦長変形)サイズで、エッセイの中に英文タイトルのものもあり、多少、『THE SCRAP』の雰囲気的に重なる部分もあります。
このシリーズ、『村上朝日堂 夢のサーフシティー』('97年/朝日新聞社)以降、自らのホームページのコンテンツをまとめたスタイルになって、あまりにファンクラブ的になりすぎたような気もします。
【1992年文庫化[新潮文庫]】