【444】 ◎ 高村 薫 『マークスの山 (1993/03 早川書房) ★★★★☆

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ミステリとしても人間ドラマとしても充分に堪能できた。

『マークスの山』.jpgマークスの山 (ハヤカワ・ミステリワールド)』 マークスの山 上.jpg マークスの山下.jpgマークスの山(上) 講談社文庫』 『マークスの山(下) 講談社文庫

 1993(平成5)年上半期・第109回「直木賞」受賞作で、1993 (平成5) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(国内部門)第1位。1994 (平成6) 年「このミステリーがすごい!」(国内編)第1位。「日本冒険小説協会大賞」も併せて受賞。

 東京で起きた連続殺人事件。被害者は謎の凶器で惨殺されている。事件の背後に潜む複雑な人間関係を、警視庁捜査第一課の合田刑事らが解き明かしていくうちに、その背景に16年前に南アルプスで起きたある出来事が浮かび上がる―。

 警察の内部組織の捜査上の確執などの描写に圧倒的なリアリティがあり、"警察小説"とも言えるかも知れません。 
 事件の背後関係は複雑を極めていますが、事件の捜査陣が事実を細かく積み上げいくうちに、通常の感覚では理解しがたいモンスターのような犯人像が浮かんでくる―その導き方が巧みで、読み進むにつれてググッと惹き込まれます。 

 "人間の業"のようなものもよく描かれていると感じました。 
 ただしその描かれ方がかなり屈折したものであるため、実際こうした形で怨念のようなものが人から人へ伝播していくものだろうか、という動機に対する疑念も感じました。 
 結局事件を複雑にしているのは、この"凝った"動機の部分ではないかと...。 

 その他にも、ミステリファンにはプロットの瑕疵と映る部分が幾つかあるかもしれません。 
 ただし(本格的ミステリーに固執しない)自分のレベルでは、ミステリとしても人間ドラマとしても、それなりに充分に堪能できました。

 '03年に文庫化されました。かなり手を加えているとのことで(この作者が文庫化の際にオリジナルに手を加えるのは毎度のことで、そのため文庫が出るのが遅くなる)、文庫の方は読んでいませんが、ドロッとした部分がややマイルドになっているとか(これではよくわからないか)。 

映画「マークスの山」.jpg 書店で見たら、文庫の初版本には、登場人物の名前にふりがながなかったような気がしましたが、「林原」は「はやしばら」ではなく、ちゃんと「りんばら」と読ませないと、「MARKS」にならないのではないだろうか。

映画「マークスの山」.jpg

映画「マークスの山」 (1995年・監督:崔洋一/出演:萩原聖人・名取裕子・中井貴一)

 【2003年文庫化[講談社文庫(上・下)]】

 


 
《読書MEMO》
2013年TVドラマ化(WOWOW「連続ドラマW」全5話)
出演:上川隆也/石黒賢/高良健吾/戸田菜穂/小西真奈美
マークスの山 TV1.jpgマークスの山 TV2.jpgマークスの山 TV3.jpgマークスの山 TV4.jpg

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