【443】 ○ 高村 薫 『リヴィエラを撃て (1992/10 新潮社) ★★★☆ (○ ニール・ジョーダン 「クライング・ゲーム」 (92年/英) (1993/06 日本ヘラルド映画) ★★★★)

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圧倒的な重層構造で迫ってくるものの、結末には消化不良感が残る。

リヴィエラを撃て.jpg リヴィエラを撃て 上巻.jpg リヴィエラを撃て下巻.jpg  「クライング・ゲーム」.jpg
リヴィエラを撃て』(1992/10 新潮社)/新潮文庫(上・下)/「クライング・ゲーム」スティーヴン・レイ

 1993(平成5)年度・第46回「日本推理作家協会賞」受賞作で、「日本冒険小説協会大賞」も併せて受賞。

 首都高速トンネル内で1人の外国人男性の遺体が発見され、その男はジャック・モーガンという元IRAのテロリストだったとわかりますが、彼が〈リヴィエラ〉なる人物に殺されると予め警察通報してきた東洋人女性も、自宅アパートで射殺されており、そのアパートからは世界的ピアニストのノーマン・シンクレアのレコードが多数発見される―。

 警視庁外事1課の刑事・手島は、ジャックが〈リヴィエラ〉を追っていたと推察し(「公安部」の刑事が小説に登場するというのが自分にとっては新鮮だった)、やがて事件の背後にはCIA、MI5までが絡む国際機密問題があるらしいことがわかりますが、肝心の〈リヴィエラ〉とは一体何なのかが掴めないまま、真相は混迷の度を深めていきます。

 硬質の文体で語られるストーリーはかなり複雑で、日本を舞台にしたスパイ小説ということもありイメージが掴みにくい部分もありました(公安というのもデモ行進の際にデモ参加者をチェックしているところぐらいしか見たことないし...)。
 ただし舞台が14年前のアイルランドへと跳ぶと、何だかイメージしやすくなったのは、スパイ物語=洋モノというイメージが自分の中にあるためでしょうか(実は日本ほどスパイが自由に出入りしている"スパイ天国"の国はないと言われてるけど)。

『クライング・ゲーム』(1992)2.jpgTHE CRYING GAME.jpg ニール・ジョーダン監督の「クライング・ゲーム」('92年/英)という元IRA兵士の男を描いた映画を思い出し、スティーヴン・レイ(渋かった!)のイメージが作中の登場人物に重なりました。スティーヴン・レイ演じるIRAのテロリストが、人質のイギリス軍兵士の死に責任を感じながらも、彼の恋人に惹かれていくという話で、ニール・ジョーダンはこの作品でアカデミー賞オリジナル脚本賞を獲っています。
スティーヴン・レイ in「クライング・ゲーム」(1992年・全米映画批評家協会賞 主演男優賞受賞)

「クライング・ゲーム」●原題:THE CRYING GAME●制作年:1992年●制作国:イギリス●監督・脚本:ニール・ジョーダン●音楽:アン・ダッドリー●時間:112分●出演:スティーヴン・レイクライング・ゲーム.jpgミランダ・リチャードソン(ジュード).jpeg/ジェイ・デイヴィッドソン/ミランダ・リチャードソン/フォレスト・ウィテカー/エイドリアン・ダンバー/ジム・ブロードベント●日本公開:1993/06●配給:日本ヘラルド映画 (評価★★★★) 
ミランダ・リチャードソン in「クライング・ゲーム」(1992年・ニューヨーク映画批評家協会賞 助演女優賞受賞)

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 高村薫小説らしく、暗い情念を持った男たちが登場し、それでいて最後はヒューマンなドラマに仕上げていますが、ミステリという観点からは、圧倒的な重層構造で迫ってくるものの、結末がやや消化不良気味で欲求不満が残りました。

 【1997年文庫化[新潮文庫(上・下)]】

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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月10日 00:15.

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