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70歳になったら奥さんに死なせてもらうと言っていた五木さん。
『対論 野坂昭如 X 五木寛之』['71年]『対論 (講談社文庫)』['73年]
野坂昭如氏と五木寛之氏の対談集ですが、'71(昭和46)年にソフトカバー単行本で刊行されたもので、リアルタイムではないですが単行本で読みました(今は文庫でも書店ではなかなか見かけない)。
対談時は2人とも40歳前後でしょうか。野坂氏の方が五木氏よりも2歳年上ですが、それぞれ昭和42年とその前年に直木賞を受賞していて、同世代的意識が感じられます。
互いの語り口によそよそしさが全くなく、世界や文学について語ってたと思ったら、すっと極めて個人的な話に入っていったりします。
「青春」とか「友情」とかいうテーマで熱く語り合っているところに、'60年代の余熱を感じます。
今で言えば、村上龍氏と村上春樹氏の対談みたいなものかという気もしますが、"両村上"の対談はこの10年後に実現し『ウォーク・ドント・ラン』('81年/講談社)という本になっています(意外と、この〈野坂X五木〉対談と間があいていないという感じ)。
五木寛之氏の奥さんが女医さんで、五木氏は、自分が70歳になったら奥さんに注射してもらって死ぬのだと言っています。
当時自ら言うところの「顔文一致」で売っていた彼の美意識による発言なのかとも思わせなくもないですが、むしろこの作家は根源的にどこかそうしたものを持っていて、それが後の宗教的傾斜に繋がっていったのでしょう。
『親鸞』あたりからか。親鸞と「出会って」、「生きていていいんだよ」と言われたような気がしたといったことを、どこかのテレビ番組で言っていたなあ(おそらくEテレ)。
【1973年文庫化[講談社文庫]】