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並外れた精神力とジャーナリストとしての強い使命感に感銘。
千葉敦子(1940-1987)
『「死への準備」日記』 朝日新聞社 ['87年] 『「死への準備」日記 (文春文庫)』
本書は、ニューヨーク在住のジャーナリストであった著者が、ガンで亡くなる'87年7月の前の年11月から亡くなる3日前までの間の、著者自身による記録です。
3度目のガン再発で、著者の病状は刻々と悪化していきますが、その状況を客観的に記し、ただし決して希望を捨てず、片や残り少ない時間をいかに一日一日有意義に使うかということについて、まるで"実用書"を書くかのように淡々と綴る裏に、著者の並外れた精神力が感じられます。
また読む側も、"今"という時間を大切に生きようという思いになります。
抗ガン剤の副作用に苦しみながらも、常に在住するアメリカ国内や世界の動向を注視し、少しでも体調が良ければ仕事をし、友人と会食し、映画や演劇を鑑賞する著者の生き方は、現代の日本の終末医療における患者さんたちの状況と比べても大きく差があるのではないかと思います。
死の3日前の最後の稿にある、「体調が悪化し原稿が書けなくなりました。申し訳ありません」との言葉に、彼女のジャーナリストとしての強い使命感を感じました。
【1989年文庫化[朝日文庫]/1991年再文庫化[中公文庫]】
《読書MEMO》
●善意の洪水に辟易する(29p)
●私は「死を見つめる」よりも、「死ぬまでにどう生きるか」のほうにずっと関心がある。死について考えろ、とあまり強要しないでほしい。(54p)
●死が遠くないと知ったら、寂しさや悲しさに襲われるはず、と決めてかかる人が多いが、これは迷惑だ。(55p)
●エンド―フィン(129p)