【397】 △ 正高 信男 『天才はなぜ生まれるか (2004/04 ちくま新書) ★★★

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着眼点はユニークだが、あくまでも著者の推論とみた方がよい部分も。

天才はなぜ生まれるか.jpg 『天才はなぜ生まれるか』 ちくま新書〔'04年〕 ウォルト・ディズニー (1901-1966).jpg ウォルト・ディズニー

 歴史上大きな足跡を残した何人かの人物に注目し、彼らには広義の意味での学習障害(LD)があり、それが彼らの業績と密接な関係があったと―。とり上げられているのは、エジソン(注意欠陥障害)、アインシュタイン(LD)、レオナルド・ダ・ヴィンチ(LD)、アンデルセン(LD)、グラハム・ベル(アスペルガー症候群)、ウォルト・ディズニー(多動症)の6人です。

 昔から天才の病跡学というのはあり、アリストテレスも「天才病理説」を唱えていたように思いますが、本書のユニークな点は、"天才"とは対義的とも思える学習障害に焦点を当て、障害があったからこそ偉業を成し得たとしているところです(LDであることが天才の要件であるとは言えないでしょうけれど)。
 例えばエジソンがそうだったという注意欠陥障害というのは、意識を次々違った対象に移動させるのが困難な障害ですが、いったん注意が向くと人並み外れた集中力を発揮すると。

 彼らは、最初は学校などで落ちこぼれでしたが、やがて頭角を現した―。
 一方で、日本の学校教育の画一主義や社会にまで及ぶ画一性は、こうした異才を見過ごしてしまうのではないかという著者の危惧には頷かされます。

 ただし、過去の人物の様々な仕事や言行の一端だけを拾って障害を推測している部分もあり、これらはあくまでも著者の推論とみた方がよいでしょう。
 突っ込みを入れたくなる記述は多いけれど、突っ込む前に1章が終わってしまう感じで、1人1人の掘り下げはやや浅い気がしました。

ウォルト・ディズニー。.jpg蒸気船ウィリー.jpg それでも、ミッキーマウスの初期のドタバタ・キャラが、ウォルト・ディズニーの多動性がそのまま投影されたものであるとか、パーク内を徘徊してゴミを拾うのがウォルトの性癖だったという話は面白くは読めました。

ウォルト・ディズニー(1901-1966)。
同じ年に4部門でアカデミー賞受賞(最多記録)。
ディズニーは1953年の4作品―「砂漠は生きている」で長編ドキュメンタリー賞、「民族と自然/アラスカのエスキモー」で短編ドキュメンタリー賞、「プカドン交響楽」で短編映画賞、「熊の楽園」で短編二巻賞をそれぞれ受賞。また個人でのノミネート数(59回)と受賞回数(22回)でもそれぞれ最多記録を保持している。

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