【393】 ◎ 辻井 正次 『広汎性発達障害の子どもたち―高機能自閉症・アスペルガー症候群を知るために』 (2004/09 ブレーン出版) ★★★★☆

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療育支援の手引きとしても、入門書としても良書。

広汎性発達障害の子どもたち.jpg 『広汎性発達障害の子どもたち―高機能自閉症・アスペルガー症候群を知るために』〔'04年〕

 広汎性発達障害(高機能自閉症・アスペルガー症候群)の子どもの療育と支援について多くの示唆を含んだ本です。

高機能広汎性発達障害 アスペルガー症候群と高機能自閉症.gif この本の5年前に同じ ブレーン出版から出た高機能広汎性発達障害-アスペルガー症候群と高機能自閉症』(杉山登志郎・辻井正次共著)も名著ですが、本書はより平易に書かれていて、かつ、著者ら主催のアスペ・エルデの会の実践活動を通しての成果を含め最新の研究成果が反映されたもの言えます。
 自閉症スペクトラムの4分の3は知的障害が無いというのはある意味驚きであり、「診断」の重要性を感じます。

 軽度発達障害の場合、「普通」の子どもたちの中に置いておけば成長するものではなく、普通学級に入れることで二次障害を重ねる危険性もあるという著者の指摘は、「普通学級」に入れるということが目的化しがちな療育現場において、子どものために本当に大切なことは何かを先々にわたり考えなければならないことを示しています。

 療育支援の手引きとなる本ですが、自閉症の入門書としても読むことができるので、広くお薦めします。

《読書MEMO》
●「普通」の子ども達のなかに置いておけば成長する、ということはない(34p)
●軽度発達障害は普通学級に入ることで二次障害を重ねる危険性も(35p)
●自閉症スペクトラム(社会的不適応のないものを含む)>広汎性発達障害(自閉的傾向を含む)>〔非定型的自閉症・アスペルガー症候群・自閉症(高機能自閉症含む)〕(47p)
●"高機能"はIQ70以上(70以下は人口2.3%、実数はもっと多い、自閉症の半分が70以下、自閉症スペクトラムの3/4は知的障害がない)(48p)
●欠点を克服しなければ...というスタンスではなく、自分はうまくいっているという感覚を育てる。人生を楽しむ、余暇支援は大事(167p)
●有名私立中学・高校や有名大学には多くのアスペルガー症候群の青年がいる(176p)
●大学でトラブルを起こすことが多い。うまくいくのはアニメ同好会や鉄道研究会の中(177p)
●『フォレスト・ガンプ』の例...「僕は兵隊にはまった」→実際には自衛隊にはなかなか入れない(180p)

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