【392】 ○ 榊原 洋一 『アスペルガー症候群と学習障害―ここまでわかった子どもの心と脳』 (2002/08 講談社+α新書) ★★★★

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知的関心を惹く考察だが、入門書としても一通りは網羅している。

1アスペルガー症候群と学習障害.pngアスペルガー症候群と学習障害.jpgアスペルガー症候群と学習障害―ここまでわかった子どもの心と脳 (講談社プラスアルファ新書)』〔'02年〕

 本書は前半部分で子どもの心の発達や知能の構造について述べ、後半部分で最近一般にもその名が知られ、わが子もそれではないかという親が増加しているアスペルガー症候群と学習障害について解説しています。

 前半部分ではソーシャルスキルの発達を中心に「心の理論」などを解説する一方、最近の認知心理学や脳科学者・澤口俊之氏の仮説を引き、知能の多重構造とワーキングメモリーの関係を説いています。
 この部分が本書の特徴の1つであり、アスペルガー症候群や学習障害はワーキングメモリーや知能モジュールの機能不全ではないかというのが、"発達のムラ"に対する著者の考察です。

 後半部分のアスペルガー症候群、学習障害の解説も丁寧で、やや専門的な部分もありますが、分かりやすい事例もとり上げられていています。
 高級レストランで客を待たせても謝らないボーイに対して「ふーん、さすがに高級レストランだね」と客が言ったのをそのまま真に受ける―とか。

 「気づかれずに増えている」と帯にありましたが、著者の主張では障害そのものが増えているのではなく、ソーシャルスキルを獲得する社会の受皿が減って、今まで気づきにくかった障害が目立つようになったということなので、このキャッチはやや違うのではないかと思いました。

《読書MEMO》
●サリーとアンの課題(55p)
●ウィリアムズ症候群-大部分、精神遅滞があるのに言語遅滞がない。「妖精様顔貌」(77p)
●サバン症候群(89p)/●ワーキングメモリー(91p)/●カナー型(106p)/●クレーン現象(108p)
●神経伝達物質セロトニンの濃度が高い(120p)
●高級レストランで客を待たせても謝らないボーイに対して「ふーん、さすがに高級レストランだね」と客が言ったのを、そのままにとる(132p)

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