【371】 △ 丸山 工作 『新・分子生物学入門―ここまでわかった遺伝子のはたらき』 (2002/03 講談社ブルーバックス) ★★★

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分子生物学についてのオーソドックスな一般向け入門書。

新・分子生物学入門.jpg新・分子生物学入門―ここまでわかった遺伝子のはたらき (ブルーバックス)』〔'02年〕丸山 工作.bmp 丸山 工作・元千葉大学学長(1930-2003)(略歴下記)

 同じ著者の『分子生物学入門-誰にでもわかる遺伝子の世界』('85年/ブルーバックス)の新版で、平易に書かれていて、かつ一定の範囲を網羅した、分子生物学についてのオーソドックスな一般向け入門書だと思います。

「受精卵クローン」と「体細胞クローン」.gif ゲノム、DNA、遺伝子などのキーワードの概念整理をするうえでも役立し、タンパク質をつくるとはどういうことかとか、ウイルスと分子生物学の関連、遺伝子工学や免疫機能についても概要は掴めます。
 キーワード整理について個人的に言えば、クローンには、「受精卵クローン」「体細胞クローン」の2種類があることも知らなかったので、参考になりました。
 
 「受精卵クローン」の方が「体細胞クローン」より技術的には簡単なわけですが、「牛」レベルで言えばわが国では'90年代に、「受精卵クローン牛」も「体細胞クローン牛」も誕生させているわけですね(「体細胞クローン牛」は世界初)。

農林水産消費安全技術センターHPより

 では「人間」レベルではどうか。
 著者によれば、「クローン人間」をつくるとして、その成功率は数%だそうです。
 一つの話題として紹介されている話ですが、イタリアの不妊治療医の間には、無精子症男性のクローンづくり計画もあるそうです(大金持ちの希望者がいるんだろうなあ)。
 
 ほとんどの先進国ではヒトクローン実験は禁止されているので、禁止されていない国(そうした法律がない国)か、「公海上の船の上」でやるということだそうで、何だか年老いた大富豪とマッド・サイエンティストが登場する小説か映画みたいな話ですが、案外「先にやったモン勝ち」と考えている学者は現実にいるのではないかと思われました。
                                      
《読書MEMO》
●受精卵クローンと体細胞クローン...受精卵クローンのメカニズムは一卵性双生児と同じ、体細胞クローンは細胞を提供した個体と同じクローンになる(19p)
●DNAのうち97%は情報を持たない。3%(3万個)が遺伝子として機能(35p)
●人とチンパンジーのDNAの配列差はわずか1.2%

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丸山 工作 (元千葉大学学長)
1930年東京生まれ。53年東京大学理学部動物学科卒業後、同大理学部大学院を経て、56年同大教養学部助手。62年理学部助手。65年教養学部助教授。72年京都大学理学部教授。77年千葉大学理学部教授。94~98年千葉大学学長。99年より大学入試センター所長。加えて、科学技術事業団さきがけ21「形とはたらき」総括として繁忙な生活が続き、自身の伝記執筆の予定がなかなか進まない。日本動物学会賞、朝日賞、紫綬褒章などを受章。

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