「●分子生物学・細胞生物学・免疫学」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【368】 多田 富雄『生命の意味論』
「●た 立花 隆」の インデックッスへ ○日本人ノーベル賞受賞者(サイエンス系)の著書(利根川 進)
分子生物学から免疫学に"乱入"してノーベル賞、そして脳科学へ。立花氏を唖然とさせる発言も。
利根川 進 氏
『精神と物質―分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか』(1990/06 文芸春秋)
1991(平成3)年・第4回「新潮学芸賞」受賞作。
個体の中に進化と同じシステムがあって、それにより免疫抗体の多様性が生み出される―。この本を読む前は、言葉で理解していてもその実よくわからなかったようなことが、読んだ後にはよくわかりました。
進化でいうところの〈突然変異〉が、免疫細胞における遺伝子組み換えというかたちで恒常的におこなわれている―。
つまり、個体を構成する細胞の遺伝子はすべて同一であるという生物学の"常識"概念を、利根川教授が見事に覆してみせたわけです(こういうパラダイム転換をもたらすものがノーベル賞の対象になりやすいのだろうなあ。そうでなければ、多方面の技術の進展や実生活に直接・間接に寄与したものとか)。
利根川氏、分子生物学から免疫学へ乱入(?)してノーベル賞を、続いては脳科学の世界へ。すごいに尽きます。
ただし、免疫学の研究においては分子生物学で培った技術が大いに役立ったとのこと。逆に、長く同じ分野で研究を続けている人は、新しい方法を思いつきにくいという傾向も、一面ではあるのかもしれないと思ったりしました。
生物はもともと無生物からできているので、物理学や化学の方法論で解明できる。人間は非常に複雑な機械に過ぎないーとおっしゃる利根川氏。
頭でわかっても、凡人には今ひとつピンと来ず、利根川ご指名の単独インタヴュアーである立花隆氏も、この発言には少し唖然としている様子ですが、脳科学の世界ではこれが主流の考えなのでしょうか。
【1993年文庫化[中公文庫]】
《読書MEMO》
●人間は60兆個の細胞からできていて、その1つ1つに長さ1.8mのDNAがあり、30億個分の遺伝情報が蓄積されているが、読み出される情報はごく一部(文庫46p)
●個体の中に進化と同じシステムがあって、それで免疫抗体の多様性が生み出されている→突然変異=遺伝子組み替え、ただし頻度が異なる(文庫252p)
●生物はもともと無生物からできているので、そうであれば物理学や化学の方法論で解明できる。要するに生物は非常に複雑な機械にすぎない(文庫322p)