【358】 ○ 池田 清彦 『さよならダーウィニズム―構造主義進化論講義』 (1997/12 講談社選書メチエ) ★★★★

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構造進化論そのものはよくわからなかったのだが、話題が広くて面白く読めた。

さよならダーウィニズム.jpg 『さよならダーウィニズム―構造主義進化論講義 (講談社選書メチエ)』 〔'97年〕

 ダーウィニズム批判の話の過程で、免疫と寄生虫のアナロジーやミトコンドリア・イブの話、超弦理論の話、俗流社会生物学(竹内久美子?)批判まで出てきて、話題は広く楽しく読めます。

 しかしカル遺伝子の話から導かれる、情報(DNA)と解釈系の関係で形質が決まるという構造主義生物学の話は、その前のソシュールの言語論の話あたりから自分とっては難解なものでした。
 しかも最後に「今のところ単なるお話にすぎない」とやられたのでは...(担当編集者たちに2日間集中講義を行い、その"語り下ろし"をもとに成った本だそうですが、編集者たちは本当に構造主義生物学というものを理解したのだろうか)。

 自分自身は本書の内容をどこまで"構造的"に理解できたかよくわかりませんが、それでも、「ビックバン直後の宇宙は5センチぐらいの球だったから、150億光年先で起きている、今地球で観測される出来事は、150億年前に5センチ先で起きた」といったような語り口が楽しく、随所に読む者の好奇心をかきたてるトピックスがある本ではありました。

《読書MEMO》
●多田富雄の話...免疫学から見ると寄生虫は自己(アニサキスは痛いが日本住血吸虫は何も感じない(免疫擬態)、擬態できないアニサキスは排除される(16p)
●ミトコンドリア・イブ...20万年前アフリカに(ホモ・サピエンスとは限らない(24p)
●超弦理論...場の統一理論に発するが、場の統一には10次元なければならない(宇宙はもともと10次元あったものが、対称性が崩れ4次元だけ顕在化?)(63p)
●俗流社会生物学...男が浮気するのは、浮気する男の方が子をたくさん残すから、3世代、4世代たつと浮気男の子供ばかり増える。100世代もたつと浮気遺伝子を持った男ばかりになり、浮気しない遺伝子はほとんど無くなる。
子供を生まないホモが淘汰されないのは、ホモに男の兄弟がいるとすると、自分の兄弟以外の男をホモ達にするから、兄弟のライバルが減る。-どうにでも恣意的に解釈してしまう。それではホモの近親相姦はどう説明する?(133p)
●構造主義生物学...カル遺伝子は性腺を作るが、マウスにはこの遺伝子がないのに性腺はある。Pax6遺伝子は情報が同じでも違う形を作り(解釈系が同じなら同じ器官を作る)、カル遺伝子は情報が違っても同じ形をつくる情報と解釈系の対応恣意性)(294p)構造主義生物学は今のところ単なるお話に過ぎない(213p)
●ビッグバン直後は宇宙は5センチぐらいの球だった。だから150億光年先で起きている、今地球で観測される出来事は、150億年前に5センチ先でおきた(220p)

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