【357】 ◎ 今西 錦司 『進化とはなにか (1976/06 講談社学術文庫) ★★★★★

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読み手に知的興奮を与えるとともに、自分で考えることを迫る本。

進化とはなにか.jpg  『進化とはなにか (講談社学術文庫 1)』  今西錦司.jpg 今西錦司 (1902‐1992/享年90)

 〈突然変異・自然淘汰〉を中心とする「ダーウィン進化論」を今西は否定しているのですが、首が長くなる過程のキリンの化石が見つからないではないか、という具合に言われると、なるほど、今西先生の言う通りだと思いました。
 自然淘汰説が正しいならば、自然淘汰の過程で、中くらいの首の長さのキリンがいた時代もあったはずだから...。
 そこで今西は、「種」レベルで、あるときに一斉に進化する(首が長くなる)要素がそこに内在したのではないかと考えるわけです。

 「講談社学術文庫」の創刊第1冊であり、最初読んだときには今西進化論の「種」レベルの進化の考え方の方が、正統派進化論の「個」レベルの進化よりしっくりきました。
 しかし、現在の進化学では今西進化論はマイナーです。今西が英語の論文を書かなかったこともあり、欧米では最初から存在すら認められていない?

 確かに、今西の言う「種」の主体性は、その根拠が希薄ではないかと言えば希薄です。
 第三大臼歯の生えない人に自然淘汰の上で何か「利点」はあるかという彼の問いは、〈自然淘汰〉説の否定論としても使えますが、何か「ハンディ」はあるかというふうに考えれば肯定論にもなります。

 しかし、今でも自分には〈共存原理〉の方が〈自然淘汰〉説より感覚的にはしっくりきてしまう。
 〈自然淘汰〉という言葉をもっと柔軟に捉えるべきか...。そうすると、今西論と変わらなくなる気もするし...。

 あまり思想論争みたいになるのは好みではありませんが、ダーウィン進化論はある意味で誰でも参加できる科学テーマであり、本書は読み手に知的興奮を与えるとともに、自分で考えることを迫る本でもあると思います。

《読書MEMO》
●ダーウィン進化論(突然変と異自然淘汰)を否定(首が長くなる過程のキリンの化石が見つからない)、正統派進化論は個体レベル、今西進化論は「種」レベル
●第三大臼歯の生えない人に、自然淘汰のうえで何か利点はあるか(142p)
●ラマルクの獲得形質遺伝説-今西は「主体性」を評価

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This page contains a single entry by wada published on 2006年9月 2日 00:25.

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