【354】 ○ 佐藤 文隆 『宇宙物理への道―宇宙線・ブラックホール・ビッグバン』 (2002/03 岩波ジュニア新書) ★★★★

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"天才"物理者が淡々と語る自らの少年時代や研究と交友の歩み。

宇宙物理への道.jpg 『宇宙物理への道―宇宙線・ブラックホール・ビッグバン』  岩波ジュニア新書 〔'02年〕 佐藤 文隆.jpg

 日本を代表する宇宙物理学者であり、一般相対性理論の研究者としても知られる著者が、自らの半生を振り返ったもの。

 山形の片田舎に生まれ、小学校卒の両親のもとで普通に少年らしく暮らし、湯川秀樹のノーベル賞受賞に刺激されて、学校で勉強しているのだから家で勉強しなくてもいいと親に言われながらも勉学に励んだ―、 
 たまたま人の勧めで京大を受験してあっさり合格し、そのつもりはなかったが大学院に進み、自らの関心に沿って宇宙線やブラックホールの研究を続け、やがてアインシュタインの重力方程式の新たな解を発見する―という、"痛快"とでも言うか、こういう人には何か資質的な"天才"を感じないわけにはいきません。

 しかし中高生向けに書かれた本書には、自らの才能を誇示する風も、科学者としての尖がった感じも、はたまた聖人君主めいた感じもまったくなく、淡々と語る研究の歩みや仲間との交流の話、科学の将来展望と若い人へ寄せる期待などは、著者の人柄を感じさせるものです。

 宇宙物理学の歩みが、ホーキング博士や多くのノーベル賞科学者の業績とともに紹介されていて、彼らの多くと著者が交流や繋がりがあるのがスゴイ。
 
 また、解があるかないかも分からないような問題に取り組む際のカン処の話や、ノーベル賞を受賞した小柴昌俊教授のカミオカンデの成果がある種の幸運によるものであったように、偶然から次の展開が見えてくることもあるという話など、科学者の研究の裏側も少し覗けたような気持ちになりました。

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