【350】 ○ 福江 純 『100歳になった相対性理論―アインシュタインの宇宙遺産』 (2005/01 講談社) ★★★★

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読みやすいが、内容的には、一般向け入門書としてはかなり詳しい方。

100歳になった相対性理論.jpg  『100歳になった相対性理論ーアインシュタインの宇宙遺産』 (2005/01 講談社)

 サイエンスライターである著者の本は、『SFを科学する』('87年/ブルーバックス)から読んでいますが、'05年出版の本書は、相対性理論や宇宙論に関する今までの著作の総まとめ的性格でありながらも、そのタイトルや内容構成は、この年の出版でなければ使えなかったものかも知れないと思われます(ちょうど100年前の1905年が、アインシュタインが特殊相対性理論を発表した年です)。

 第1章、第2章でそれぞれ、アインシュタインの特殊相対性理論、一般相対性理論とその実証について扱っていますが、以降、第3章から第7章まで、ビッグバン宇宙論、ブラックホール宇宙像、クェーサー、観測的宇宙論(インフレーション宇宙論)、タイムトラベル理論について、それらの中核となった学者がその理論を発表した年を「相対性理論○○歳」というように追いながら、各内容を解説しています。

 「中核となった学者」とは、宇宙膨張論を発見したハッブル('29年)、ブラックホールを予言したオッペンハマー('39年)、クェーサーを発見したマーチン・シュミット('63年)などで、佐藤勝彦・東大教授の「インフレーション理論」も、同じ時期('81年)に同じ理論を発表した米国のグースと併せて1章を割いて理論紹介されています。
 ただし欧米では、「インフレーション理論」の提唱者としてグースの名前しか出てこないことが多いというのは、ちょっと残念な気もします。

 イラストや写真が適宜挿入されていて文章も読みやすいですが、内容的には一般向け入門書としては、かなり詳しく書かれている方ではないでしょうか。
 忘れかけていたことの復習用にも読めるし、最新動向を知る上でも役に立ちます。

 最後の第8章で、2005年(相対性理論100歳)時点での相対性理論の今後を展望していますが、相対性理論を観測実証しようという様々な動きがあることがわかり、興味深かったです(すでに部分的には、"重力レンズ"現象や飛行機とセシウム時計を使った実験などで観測・実証されていて、GPSなどに応用されているわけですが)。

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