【346】 ○ 黒木 哲徳 『入門 算数学 (2003/07 日本評論社) ★★★★

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こういう具合に教えてくれていれば算数嫌いにならなかったと思うかも。

入門 算数学.jpg 『入門 算数学』(2003/07 日本評論社)算数のできる子どもを育てる.jpg 木幡 寛 『算数のできる子どもを育てる

 数学者であり長年数学教育の研究に携わってきた著者による小中学校レベルの算数・数学の入門書。

 算数の背景にある数学的思考を、算数を学ぶ際に前面に押し出すという考えのもとに書かれていて、素人目にはかえって難しくなるのではと思いがちだけれども、読んでみると目からウロコが落ちるようによくわかります。
 本書を読んで、「ああ、学校でこういう具合に教えてくれていれば算数嫌いにならずに済んだのに」と思った人も多いとか。

 例えば、足し算・引き算を教える前に、数の概念をキッチリ解説しています。
 数には「集合数」「順序数」があり、「集合数」の性質には、1対1対応での不変性などがある...と言葉にすると難しく聞こえますが、図説でわかりやすく解説されていて、「1〜9までと10との明確な違い」とか今まであまり考えたこともなかった話や、古今東西の数の数え方(位取り)といった面白い話もあります。

 以前、「自由の森学園」の校長だった木幡寛氏の『算数のできる子どもを育てる』('00年/講談社現代新書)を読んで、「鯨8頭とサンダル2足は足すことができるか」といった問いから子どもに数の概念を理解させるやり方があり、実にユニークでわかりよいけれど、こんなふうに教えている余裕が学校教育にあるかなと思いました(実際、氏は退職後にフリースクールにおいてこのやり方で教えている)。
 本書を読んで、そうした考え方(教え方)が、ユニークというよりもむしろ"スジ論"的考え方であることが、体系的な説明を通してわかりました。

 ただし、本書にあるような考え方に基づく指導方法は「学習指導要領」にはなく、こうした教え方は教師の自主的な研究・努力と、現場でそうした時間を作る工夫に懸かっているということなのでしょう。

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