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"現場教師の作戦参謀"が敢えて広く世間に議論を求めた本か。
『子どもよりも親が怖い―カウンセラーが聞いた教師の本音 プレイブックス・インテリジェンス』 〔'02年〕
著者の諸富祥彦氏は、トランスパーソナル心理学(現代心理学とスピリチュアリティを統合した心理学)が専門の大学の先生であり、臨床床心理士であると同時に教育カウンセラーでもあり、この本は教育現場の教師の立場から、学校にすべての責任を押し付ける傾向にある親に対する批判の書となっています。
実際「子ども」よりも「親」が教師の悩みの種という状況は、かなり多くあるのでしょう。「困った親」のタイプを本書で列挙していますが、こうした親が増えているのかも知れないと思わせるものです。
もちろん校長や一部教師にも問題人物がいることを、具体例をあげて示していますが、著者の基本スタンスは「問題の子どもの背後には問題の親がいる」ということではないかと思われます。
こうして一般書として刊行された場合、より多くの教師の目に留まり、自分を追い込みがちだった教師の救いになる可能性も高くなる一方、多くの親たちの目に触れるので、その場合に親たちの自省を促すだけの説得力のある内容になっているかどうか、やや疑問も残りました。
最終章に「親と教師でおこなう学校改革13の提言」を掲げていますが、「親こそ教育の主体である」「親と教師。必要なのは信頼できる関係づくり」などやや抽象的で(部分的には具体的な提案もありますが)、最後にはスピリチュアリズムっぽい話になってしまいます。
著者のホームページのプロフィール紹介には、「時代の精神(ニヒリズム)と闘うカウンセラー、現場教師の作戦参謀。」とあり、教師向けには『教師がつらくなった時に読む本』(諸富祥彦教師を支える会編/'00年/学陽書房)なども出しているので、この新書本は行動派の著者が、敢えて広く世間に議論を求めた本と解せないでもありませんが、教師寄りの立場が鮮明なだけに、どう親に読まれるか危惧も感じます。
《読書MEMO》
●親の世代間格差(30-35p)...
1.教師に協力的な「山口百恵」世代
2.自己中心的な「松田聖子」世代
3.我慢することを知らない「浜崎あゆみ」世代
●親のタイプ(84-90p)...
1.優等型の親に多い「支配型」...幼稚園などで他の子に対しても細かく注意する
2.「家来型」...子供はわがままに
3.「放任型」...子供が非行に走りやすい
●理不尽なことを言ってくる親に説得は通じない。まず、相手の話を聴くこと(158p)