【329】 ○ 岸本 裕史 『見える学力、見えない学力 [改訂版]』 (1996/03 大月書店・国民文庫) ★★★★

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「百マス計算」の創案者による教育論。しっかりとした理念がある。

見える学力、見えない学力.jpg見える学力、見えない学力 (国民文庫)』 [改訂版] photo.jpg 岸本 裕史 氏

 本書では、生きていく上での基礎的能力として、基礎的な体力・運動能力、感応表現力、そして基礎学力を挙げています。
 テストや通知簿で示される学力は「見える学力」であり、その「見える学力」の土台にはこうした「見えない学力」、つまり基礎学力があり、「見えない学力」を太らせなければ「見える学力」も伸びないと。そして、読む能力、書く能力、計算する能力が基礎学力の3つの源泉だとしています。

 著者は元小学校教諭で、「百マス計算」の創案者です。本書の終わりの方で、方法論の1つとして「百マス計算」が紹介されています(「百マス計算」は教師の言う通りにやらない生徒の考案であったことが明かされている)。
 しかし本書全体としては、子どもの自立性や他者を思いやる気持ちを育てること、そしてそのためには家庭での生活習慣が大切であることを説く教育論となっています。
 特に、学力の土台は言語能力であるとし、読書習慣の重要性を力説しています。
                                                   
 本書の初版は'81(昭和56)年で、その頃から「読み書き計算」の重要性を述べていたわけですが、それ以上に、著者の理念と経験に基づく学力観、子どもの成長やしつけに関する多面的な見方、低学力によって子どもの機会が失われることがないようにという思いなどが伝わってくる良書であると思います。

 【1981年初版文庫・1996年改訂[国民文庫]/1994年単行本化[大月書店]】

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岸本裕史(きしもと・ひろし) 教育コンサルタント 2006年12月26日、胆のうがんのため死去、76歳。

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