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「●中公新書」の インデックッスへ
実験に基づく興味深い考察に、著者の学際的視点が生きている。
正高 信男 氏 (HPより)
『子どもはことばをからだで覚える―メロディから意味の世界へ (中公新書)』
子どもはどうやって言葉を獲得するのだろうか。著者によると、赤ん坊は母親の声から単語のまとまりを感じ取り、意味を理解し、やがて自ら用いることになうという。どうやって感じ取るかというと、協和音を生得的に好むからだそうです。
つまり人間の声というのは和音なのです。だから、雑多な物音の中から母親の声だけを聞き分けることができる。
赤ん坊がモーツァルトを聴くことを好むのは、モーツァルトの曲に和音が巧みに用いられているからのようです。
そのほかにも、子どもの記憶、発声、指差しといった行動がどういうメカニズムで為されるのかを様々な実験を通して考察していて、最後に言葉の意味がどうやって理解されるのかを、近年注目を集めている「言語モジュール」論や「ワーキング・メモリー」の概念モデルから説いています。
著者は京都大学霊長類研究所助教授で専攻は比較行動学ですが、『父親力』('02年/中公新書)や『ケータイを持ったサル』('03年/中公新書)など、専門を超え、社会学・心理学にまで踏み込んだ一般向け著書もあります。
それらの内容については賛否があるようですが(特に『ケータイを持ったサル』は"問題書籍"というか"問題にすらならない本"ではないかと思うのですが)、本書に限って言えば、著者の専門領域をさほど超えない範囲で、その学際的視点が生きているように思えました。
《読書MEMO》
●胎児に聞こえるのは、母体の血液の流れや心拍の音と妊婦自身の声だけ(胎児にモーツァルトを聴かせても聞こえはしない)(3p)
●新生児はモーツァルトが好き(和音を好む。人間の声が和音で構成されているため、生得的にそうした嗜好になっている)(14p)