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河合氏が児童文学に触れて書いたものではベスト。
『子どもの宇宙 (岩波新書)』 〔'87年〕
河合隼雄氏が児童文学について書いているものは、この新書の出版前後にも何冊か文庫化されていて、いずれも素晴らしい内容です。
ただしそれらが過去に各所で発表したものを再編したものであるの対し、本書は丸々1冊書き下ろしであり、まとまりと深みにおいてベスト、渾身の1冊だと思います。
子どもと、家族・秘密・動物・時空・老人・死・異性という7つのテーマに全体を切り分け、子どもの世界にこれらがどう関わるのか、著者の深い洞察を展開しています。
そして、その中で家出や登校拒否などの今日的問題を扱いつつ、優れた児童文学に触れ、それらから得られるものを解き明かし、読者に子どもの持つ豊かな可能性を示しています。
児童文学について書かれた従来の氏の著作に比べ、遊戯療法や夢分析の事例など、臨床心理学者としての視点が前面に出ている一方、育児・児童教育についての示唆も得られる本です。
もちろん児童文学案内としても読め、本書の中で紹介された本は、是非とも読んでみたくなります。
ちなみに個人的に一番強い関心を抱いたのは、太郎という7歳で病気で死んでいく子どもの眼から見た世界を描いた小川未明の「金の輪」で、この極めて短く、かつ謎めいた作品を、小川未明の多くの作品の中から河合氏が選んだこと自体興味深かったですが、河合氏なりの解題を読んで、ナルホドと。
《読書MEMO》
●主要紹介図書...
◆ベバリイ=クリアリー『ラモーナとおかあさん』
◆E・L・カニグズバーグ『クローディアの秘密』...美術館に家出する
◆E・L・カニグズバーグ『ジョコンダ夫人の肖像』
◆エーリヒ・ケストナー『ふたりのロッテ』
◆F・E・H・バーネット『秘密の花園』
◆キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』
◆フィリパ・ピアス『トムは真夜中の庭で』『まぼろしの小さい犬』
◆C・S・ルイス『ナルニア国ものがたり』
◆キャサリン・ストー『マリアンヌの夢』
◆アリソン アトリー『時の旅人』
◆小川未明『金の輪』...死んでいく子どもの眼から見た世界
◆ミヒャエル・エンデ『はてしない物語』
◆ハンス・ペーター・リヒター『あのころはフリードリヒがいた』
◆今江祥智『ぼんぼん』
◆佐野洋子『わたしが妹だったとき』
◆I・ボーゲル『さよなら わたしのおにいちゃん』
◆イリーナ・コルシュノウ『だれが君を殺したのか』