【321】 ○ ささや ななえ (原作:椎名篤子) 『凍りついた瞳(め)―子ども虐待ドキュメンタリー』 (1995/11 集英社) ★★★★

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虐待の多様な現実と被虐待児や親などへのケアの重要性を訴える。

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凍りついた瞳(め)―子ども虐待ドキュメンタリー』ソフトカバー版 ['96年]/椎名篤子『親になるほど難しいことはない―「子ども虐待」の真実 (集英社文庫)

 本書はの'94年9月号の雑誌「YOU」に発表され、以降10回にわたって連載されたノンフィクション漫画ですが、描かれている「虐待」問題というテーマは重く、「児童虐待防止法」制定への大きな推進力になったとされるほどの反響を呼びました。

 作者は、本書の元になった椎名篤子氏の『親になるほど難しいことはない』('93年/講談社)という虐待の実態をレポートしたノンフィクションと偶然出合い(たまたま入った喫茶店に置いてあった)、作品イメージが噴出するとともに、この内容を多くの人に伝えねばと、ほとんど"啓示的"に思ったそうです。

 虐待問題に関わった保健婦や医師、ケースワーカーなどの視点から8つのケースが取り上げられ(身体的虐待だけでなくネグレクトや性的虐待も含む)、解決に至らなかったケースもあれば、医師、保健婦、ケースワーカーらの洞察と親や子へのケア、関係機関との連携などにより、母子関係を修復し、子の将来に明るい兆しが見えたものもあります。

 センセーショナリズムに走らず、虐待の背後にあるDVなどの夫婦関係や親自身の養育歴の問題を、家族カウンセリングなどを通してじっくり描き、関係者が、いっそ親子を引き離した方が子のためではと思いながらも、根気よく母親を援助し、母親が愛情を回復することで子供が少しずつ明るくなっていくという話は感動的です。

 親にすべての責任を押し付け、また(女性漫画誌に連載されたということもあるが)親自身がそう思い込むことは問題の解決にならないことをこの漫画は教えてくれ、虐待を受けた子や親などへのケアとその後の支援の必要を訴えています。
 
 しかし一方で、虐待しているという意識さえない"未成熟"な親や、児童相談所の対応の拙さ(本書でも多々出てくる)などのために、子供を救うことができなかったケース(といって親や児相は何か罰を受けるわけではない!)などを考えると、虐待は「犯罪」であるという社会的意識を強化することも大切ではないかと思いました。 

 【1995年愛蔵版・1996年ソフトカバー版{集英社]】

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月27日 00:45.

【320】 ◎ 佐藤 幹夫 『自閉症裁判―レッサーパンダ帽男の「罪と罰」』 (2005/03 洋泉社) ★★★★☆ was the previous entry in this blog.

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