【301】 △ 内田 樹 『街場の現代思想 (2004/07 NTT出版) ★★★

「●社会学・社会批評」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【302】 日垣 隆 『世間のウソ
「●う 内田 樹」の インデックッスへ

盲従でも全否定でもなく、自らの「考えるヒント」にすべき本。

街場の現代思想.jpg 『街場の現代思想』 ['04年/NTT出版] 街場の現代思想2.jpg 『街場の現代思想 (文春文庫 (う19-3))』 ['08年]

 哲学的エッセイであり、社会批評にもなっていて、著者の本の中では最も平易な部類に属する本です。

 「自分の持っている知識」の俯瞰的な位置づけを知ることが大事であることを説き、それを、既読の本がどこに配置され「これから読む本」はどこにあるかを知っているという「図書館の利用のノウハウ」に喩え、「教養」とは「自分が何を知らないかについて知っている」、すなわち「自分の無知についての知識」のことであるという、冒頭の「教養論」はわかりやすいものでした。

 第1章は、「家庭」で自然に獲得された「文化(教養)」と学校などで学習により獲得されたそれとの質的な違いを説き、「文化資本」の偏在により階層化する社会(東大生の親も高学歴であるような社会)では、「教養」を意識した段階でその者はプチブルならぬ"プチ文化資本家"となり、"(文化)貴族"にはなりえないという「文化資本論」を展開しています(読んでガックリした人もいるかも)。

負け犬の遠吠え.jpg 第2章は、酒井順子氏の『負け犬の遠吠え』('03年/講談社)の視点に対する共感で溢れ、第3章は、主に20代・30代の若い人の仕事(転職・社内改革)や結婚の悩みに対する人生相談の回答者の立場で書かれていますが、読み進むにつれて通俗的になってきて、まあその辺りが「街場」なのでしょうけれど...。

 自分のブログや地域誌に発表した文章の再編で、やっつけ仕事の感じもありますが、それでも所々に著者ならでの思考方法(乃至レトリック)が見られます。
 物言いが断定的でオーバー・ゼネラリゼイション(過度の一般化)がかなりあるので、これらを鵜呑みにせず、と言って全否定もせず、自らの「考えるヒント」にすべきなのでしょう。 

 【2008年文庫化[中公文庫]】

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2006年8月26日 22:06.

【300】 ○ 酒井 順子 『負け犬の遠吠え』 (2003/10 講談社) ★★★☆ was the previous entry in this blog.

【302】 △ 日垣 隆 『世間のウソ』 (2005/01 新潮新書) ★★★ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1