【292】 △ 田中 秀臣 『経済論戦の読み方 (2004/12 講談社現代新書) ★★★

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マクロ経済の参考書として読めるが、やや乱暴な論調も。

経済論戦の読み方.jpg田中 秀臣 『経済論戦の読み方』3.JPG
経済論戦の読み方』 講談社現代新書〔'04年〕

 著者は、インフレターゲット論者として、論文、一般向け書籍、ネットなどで活発な活動を続けている人ですが(この人の個人サイトは映画の話題などもあって面白い)、本書は"経済論戦"の現状を俯瞰的に眺望する前に、マクロ経済理論の解説を行っています。このあたりの解説自体は丁寧で、「IS-LM分析」や「流動性の罠」理論を理解するうえでの適切な参考書としては読めます。

 しかし具体的に持論の解説がないまま「構造改革主義」批判に入り、そこでも経済理論の解説が続くため、論点を"読み解く"うえでは、自分のレベルでは必ずしも読みやすいものではありませんでした。
 特に著者の唱える「漸進的な構造改革」は、構造改革論者にも同じことを唱えている人がいるのでややこしい。

竹中平蔵.jpg 最初に一般論としてのエコノミストの分類をしていますが、「政策プロモーター型」の竹中平蔵氏について、度々の変節を揶揄して「カオナシ」と呼んでいるところは著者らしいユーモア。

 しかし、 "経済論戦"というものが何だか今ひとつ分かりにくくて本書を手にとった自分のような読者が期待する "読み方"の部分については、章間にある"辛口ブックレビュー・コラム"がその端的な形と言えるかと思いますが、これが一番面白いものの、やや乱暴な論調も見られ、明らかに主題から外れた揚げ足取りの部分もあるように思えました。

《読書MEMO》
●辛口ブックレビュー・コラム
◆デフレが人を自由にすると説く奇妙な論理...榊原英資 『デフレ生活革命』('03年/中央公論新社)
◆時代遅れの経済学を前提とした主張...リチャード・クー 『デフレとバランスシート不況の経済学』('03年/徳間書店)
◆日銀をあまりにも過大評価している...リチャード・A・ヴェルナー 『謎解き!平成大不況』('02年/PHP研究所)
◆年金問題に数字を伴う処方箋を提示してほしい...金子勝 『粉飾国家』('04年/講談社現代新書)
◆「万年危機論者」たちの終わらない宴...高橋乗宣 『"カミカゼ"景気』('04年/ビジネス社)、ラビ・バトラ 『世界同時大恐慌』('04年/あ・うん)、副島隆彦 『やがてアメリカ発の大恐慌が襲いくる』('04年/ビジネス社)、本吉正雄 『元日銀マンが教える預金封鎖』('04年/PHP研究所)、藤井厳喜 『新円切替』('04年/光文社ペーパーバックス)、吉川元忠 『経済敗走』('04年/ちくま新書)
◆木村剛の「キャピタル・フライト論」の大きな誤り...木村剛 『戦略経営の発想法』('04年/ダイヤモンド社)、『キャピタル・フライト-円が日本を見棄てる』('01年/実業之日本社)
◆思い込みばかりが浮き彫りになる「御用学者」批判...奥村宏 『判断力』('04年/岩波新書)

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月26日 19:51.

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