【281】 △ ユージン・E・ランディ/堀内 克明 『アメリカ俗語辞典 (1975/09 研究社出版) ★★★

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アメリカ俗語と同時に日本の俗語も知ることができ、読み物としては面白いが...。

アメリカ俗語辞典3.bmp アメリカ俗語辞典.jpg 『アメリカ俗語辞典』2.jpg
アメリカ俗語辞典』 (1975/09 研究社出版)

 この辞典が出来上がった契機というのが、臨床心理の医者である著者(ランディ)が、麻薬患者などと意思疎通を図る過程で、隠語を蒐集していったというものです。黒人、麻薬、同性愛、バイク乗り、犯罪、売春、医薬などに関する俗語が多く、そのまま'60年代のアメリカの世相を反映したものとなっています。

 俗語というのはアンダーグラウンドの人々が自分たちとオバーグランドの人々を区別しようとする働きから生まれるものだとすれば、'60年代は特にそうした土壌があったのでしょう。さらに、批評家(哲学者?)の東浩紀氏が『動物化するポストモダン-オタクから見た日本社会』('01年/講談社現代新書)の中で指摘したように、「日本のオタク系文化の起源はじつは(中略)、戦後'50年代から'70年代にかけてアメリカから輸入されたサブカルチャーだったという事実」がここにあるのかも知れません。

 由緒ある出版社から出されている辞典ですが、英会話教室で机の上に置いといたら、ネイティブの教師から "Oh!No!"というお言葉を頂戴しました。ペーパーバック小説などを読むときには役に立ちそうな気もするのですが、この辞書をパラパラとめくって読んでいるだけで'60年代のアメリカ文化的ムードが伝わってきます。

『アメリカ俗語辞典』1.jpg この辞典のもう1つの特徴は、アメリカ俗語に対応する日本の俗語のマニアックとも思える蒐集ぶりです(訳編者が70年代に大学生を中心に集めたという)。試しに bear とか bitch とか bush という語を引いて見ればわかりますが、完全に〈日本語俗語辞典〉と化しています。日本にだってこんなに俗語はあるぞ〜みたいな。多分〈日本語の俗語〉の方も、一般の読者には初めて知るものの方が圧倒的に多いかと思います。

 読み物としては面白いですが、ペーパーバック小説などを読むとき以外で役に立つかどうかというと、汎用性という点ではどうかなという気もする辞典です。

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