【279】 △ 永江 朗 『いまどきの新書―12のキーワードで読む137冊』 (2004/12 原書房) ★★★

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読書案内であり、社会批評風エッセイでもあることが良かったのか疑問。

いまどきの新書1.jpg いまどきの新書.jpg 『いまどきの新書―12のキーワードで読む137冊』 (2004/12 原書房)

 「週刊朝日」連載の著者の書評コーナー「新書漂流」をまとめたもので、社会、ビジネス・経済、生き方、思考の道具、暮らし、趣味、国際、芸術、科学、歴史、文化、読書の12分野に"かっちり"ジャンル分けして、1冊につき見開き2ページで内容紹介していますが、よくこれだけの広範囲にわたってコンスタントに集めてきたなあという感じ。

 構成上、読みやすいといえば読みやすいのですが、本の紹介がエッセイ風で、そこに著者の社会批評(小泉首相、石原都知事批判が結構なされている)が含まれているのが、読書案内という観点からするといいのかどうか。

 新書本のライン・アップ自体は悪くないです。
 比較的身近なテーマのものが多く、ただし、ちょっとマニアックなものや趣味的なものも紹介されていて、「ああ、また読みたい本が出てきたなあ」という気にはさせられました。
 ただし、限られた文字数の中で他の本も紹介されていて、社会批評風のエッセイのスタイルをとれば当然そうなるのかも知れませんが、肝心の主対象となる本の紹介や読み解きがさらっとしたものになってしまった面もあります。

 著者はインタビュアーとしてのキャリアもあり、その本を書いた人の経歴や周辺をあたるというのは著者らしいのですが、一方で個人的に、この人はコンテキスト(文脈)で読み込むタイプの批評家でもあると思っており、後者の持ち味が生かされていないのではという気も、ややします。

 単行本化するにあたって、取り上げた本に関連するテーマを扱っている新書本を「こちらもおすすめ」として2,3冊ずつ紹介していますが、簡単な内容紹介があれば良かったと思います(左側のスペース、少し余ってるし)。
 それらの中には昔からのロングセラーも含まれていますが、そこまで紹介するならば、本文紹介の本も含めて、出版年を入れてほしかった。

 ああ、でもやっぱり、新書のガイドブックを読むって「ガイドブックのガイドブック」を読んでいるような...。

《読書MEMO》
●取り上げている本(一部)
◆1.社会―『ワイドショー政治は日本を救えるか』、『人口減少社会の設計』、『若者の法則』、『監視カメラ社会』、『東京都政』、『教育改革と新自由主義』 ほか 
上司は思いつきでものを言う.jpg ◆2.ビジネス、経済―『情報の「目利き」になる!』、『インターネット書斎術』、『論理に強い子どもを育てる』、『食べていくための自由業・自営業ガイド』、『上司は思いつきでものを言う』、『コーポレート・ガバナンス』『働くことは生きること』 ほか 
さみしい男.jpg ◆3.生き方―『ルポ「まる子世代」 変化する社会と女性の生き方』、『DV (ドメスティック・バイオレンス) 、『さみしい男』、『シングル化する日本』、『中高年自殺』、『自分の顔が許せない!』 ほか 
◆4.思考の道具―『哲学は何の役に立つのか』、『教養としての「死」を考える』、『現代日本の問題集』、『原理主義とは何か』、『食の精神病理』、『生き方の人類学』 ほか 
◆5.暮らし―『和食の力』、『行儀よくしろ。』、『運動神経の科学-誰でも足は速くなる』、『人体常在菌のはなし-美人は菌でつくられる』、『住まいと家族をめぐる物語-男の家、女の家、性別のない部屋』、『憲法対論』、『適応上手』 ほか 
◆6.趣味―『いい音が聴きたい-実用以上マニア未満のオーディオ入門』、『マンガで読む「涙」の構造』、『素晴らしき自転車の旅-サイクルツーリングのすすめ』、『ロンドンの小さな博物館』、『ラーメンを味わいつくす』、『匂いのエロティシズム』 ほか
◆7.国際―『北朝鮮難民』、『デモクラシーの帝国-アメリカ・戦争・現代世界』、『ナショナリズムの克服』、『グレートジャーニー-地球を這う1南米〜アラスカ編』、『日朝関係の克服』、『ドキュメント女子割礼』 ほか
◆8.芸術――『キーワードで読む現代建築ガイド』、『表現の現場 マチス、北斎,そしてタクボ』、『恋するオペラ』、『ウィーン・フィル 音と響きの秘密』、『人形作家』、『江戸の絵を愉しむ』 ほか
進化論という考えかた.jpg ◆9.科学―『進化論という考えかた』、『自然保護のガーデニング』、『お話・数学基礎論』、『科学の大発見はなぜ生まれたか-8歳の子供との対話で綴る科学の営み』、『意識とはなにか-「私」を生成する脳』、『時間の分子生物学』 ほか
◆10.歴史―『ヒエログリフを愉しむ』、『ダルタニャンの生涯-史実の「三銃士」』、『江戸三〇〇藩最後の藩主-うちの殿さまは何をした?』、『言論統制-情報官・鈴木庫三と教育の国防国家』、『「明星」50年601枚の表紙』、『日本の童貞』 ほか
犬は「びよ」と鳴いていた.jpg ◆11.文化―『洋菓子はじめて物語』、『新宗教と巨大建築』、『犬は「びよ」と鳴いていた』、『漢字と中国人』、『「しきり」の文化論』『「おたく」の精神史-一九八〇年代論』 ほか
◆12.読書―『新書百冊』、『メルヘンの知恵 ただの人として生きる』、『眠りと文学-プルースト、カフカ、谷崎は何を描いたか』、『鞍馬天狗』、『「面白半分」の作家たち』、『シェークスピアは誰ですか?』、『未来をつくる図書館』 ほか

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月25日 01:22.

【278】 ○ 斎藤 哲也 『使える新書―教養インストール編』 (2003/12 WAVE出版) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【280】 ○ 鹿島 茂/福田 和也/松原 隆一郎 『読んだ、飲んだ、論じた―鼎談書評二十三夜』 (2005/12 飛鳥新社) ★★★★ is the next entry in this blog.

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