「●本・読書」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【279】 永江 朗 『いまどきの新書』
千円にしては「使える」ブックガイド。巻末「新書コレクション500」がいい。
『使える新書―教養インストール編』['03年/WAVE出版]
山とある新書の中から、「使える」「役に立つ」ことを最優先にして120冊強を選び、1冊につき1〜3ページで内容紹介しています。編者の言う「使える」とは、例えば、自明とされている常識を問いなおしたり、物事を筋道だてて考えたりといった汎用的な思考ツールを提供するものであるとのことです。
分類を兼ねた章立てが「ビジネス社会サバイバルの書」、「人生の兵法」、「世の中を知る遠近法」、「科学が人間について知っている二,三の事柄」、「暮らしのリテラシー」となっているのがユニークで、学際的なテーマが多い最近の一般教養系新書の傾向を反映しているとも言えます。
編者の斎藤哲也氏('71年生まれ)をはじめ5人の分担執筆になっていて、ビジネスから哲学、社会学、科学、さらに趣味・生活まで、広いジャンルの本を取り上げていますが、充分に読み込みがなされた上でポイントを絞って解説されているものがあると思えば、趣旨解釈や論調が「?」のものも一部ありました。
新書本の選択そのものはそれほど悪くないと思うのですが、個々の解説には賛否あるかもしれません。ただし、知的興奮を喚起させるか(要するに、面白いかどうか)ということに結構ウェイトがおかれているようで、個人的にはそうした姿勢は好きです。むしろ本文よりも、最終章として付録的にある「新書コレクション500(冊)」が、新書別にロングセラーを挙げていたりして、それぞれに簡単な内容紹介もあり、本文より役に立ったりして...(一定の評価が確立している本ばかりだが、いいライン・アップだと思う)。
若い編者が「教養インストール」などというサブタイトルを掲げるところが厭らしい感じがする人もいるだろうし、個人的には不似合いというかアナクロな感じがしましたが、中身はそんな大それたものでもなく、と言って貶すほどのものでもないと思います。
あれもこれも読まなきゃと思うとため息が出そうにもなりますが、「教養」とは「自分が何を知らないかについて知っている」ことだと、本書でもその著書が紹介されている内田樹氏も言っておりました。
本体価格千円にしては「使える」ブックガイドだと思います。でも、新書のガイドブックを読むって、福田和也氏が言うところの、「ガイドブックのガイドブック」を読んでいるようなところもあるなあ。
《読書MEMO》
●紹介されている新書(一部)
・アーロン収容所 --西欧ヒューマニズムの限界(会田雄次・中公新書)
・キヤノン特許部隊(丸島儀一・光文社新書)
・ウェルチにNOを突きつけた現場主義の経営学(千葉三樹・光文社新書)
・日本の公安警察(青木理・講談社現代新書)
・債権回収の現場(岡崎昂裕・角川Oneテーマ21)
・値切りの交渉術(新井イッセー・生活人新書)
・議論のレッスン 福澤一吉 生活人新書
・「分かりやすい表現」の技術(藤沢晃治・ブルーバックス)
・インタビュー術!(永江朗・講談社現代新書)
・相手に「伝わる」話し方--ぼくはこんなことを考えながら話してきた(池上彰・講談社現代新書)
・ギリギリ合格への論文マニュアル(山内志朗・平凡社新書)
・ゼロからわかる経済の基本(野口旭・講談社現代新書)
・景気と経済政策(小野善康・岩波新書)
・バブルとデフレ(森永卓郎・講談社現代新書)
・「欲望」と資本主義--終りなき拡張の論理(佐伯啓思・講談社現代新書)
・消費資本主義のゆくえ--コンビニから見た日本経済(松原隆一郎・ちくま新書)
・日本の経済格差 --所得と資産から考える--(橘木俊詔・岩波新書)
・軍師・参謀--戦国時代の演出者たち(小和田哲男・中公新書)
・アメリカ海兵隊(野中郁次郎・中公新書)
・ゲームの理論入門--チェスから核戦略まで(モートン・D・デービス/翻訳:桐谷維・森克美・ブルーバックス)
・ゲームとしての交渉(草野耕一・丸善ライブラリー)
・詭弁論理学(野崎昭弘・中公新書)
・「わからない」という方法(橋本治・集英社新書)
・社会認識の歩み(内田義彦・岩波新書)
・寝ながら学べる構造主義(内田樹・文春新書)
・思考のための文章読本(長沼行太郎・ちくま新書)
・一億三千万人のための小説教室(高橋源一郎・岩波新書)
・受験は要領(和田秀樹・ゴマブックス)
・孔子(貝塚茂樹・岩波新書)
・論語の読み方(山本七平・ノン・ブック)
・飛鳥へ、そしてまだ見ぬ子へ(井村和清・ノン・ブック)
・不平等社会日本--さよなら総中流(佐藤俊樹・中公新書)
・社会的ひきこもり(斎藤環・PHP新書)
・森田療法(岩井寛・講談社現代新書)
・やさしさの精神病理(大平健・岩波新書)
・< 対話>のない社会(中島義道・PHP新書)
・なぜ人を殺してはいけないのか(小浜逸郎・新書y)
・新・シングルライフ(海老坂武・集英社新書)
・禅と日本文化(鈴木大拙/翻訳:北川桃雄・岩波新書)
・朝比奈隆 わが回想(朝比奈隆・中公新書)
・日本の思想(丸山真男・岩波新書)
・ヒロシマ・ノート(大江健三郎・岩波新書)
・戒厳令下チリ潜入記(G.ガルシア=マルケス/訳:後藤政子・岩波新書)
・貧困の克服 (アマルティア・セン/訳・大石りら/集英社新書)
・楽譜の風景(岩城宏之・岩波新書)
・天才になる!(荒木経惟・講談社現代新書)
・日本人のしつけは衰退したか(広田照幸・講談社現代新書)
・『社会調査』のウソ(谷岡一郎・文春新書)
・アトピービジネス(竹原和彦・文春新書)
・食のリスクを問いなおす(池田正行・ちくま新書)
・『食べもの情報』ウソ・ホント(高橋久仁子・ブルーバックス)
・里山再生(田中淳夫・新書y)
・日本の社会保障(広井良典・岩波新書)
・自動車の社会的費用(宇沢弘文・岩波新書)
・教育改革の幻想(苅谷剛彦・ちくま新書)
・若者はなぜ「決められない」か(長山靖生・ちくま新書)
・安心社会から信頼社会へ(山岸俊男・中公新書)
・現代社会の理論(見田宗介・岩波新書)
・グローバリゼーションとは何か(伊豫谷登士翁・平凡社新書)
・マックス・ヴェーバー入門(山之内靖・岩波新書)
・アメリカ産業社会の盛衰(鈴木直次・岩波新書)
・ヘッジファンド(浜田和幸・文春新書)
・金融工学とは何か(刈屋武昭・岩波新書)
・移民と現代フランス(ミュリエル・ジョリヴェ/訳:鳥取絹子・集英社新書)
・現代戦争論(加藤朗・中公新書)
・新書 アフリカ史(宮本正興+松田素二編・講談社現代新書)
・制御工学の考え方(木村英紀・ブルーバックス)
・本の未来はどうなるか(歌田明弘・中公新書)
・飛行機物語(鈴木真二・中公新書)
・ロボット入門(舘暲・ちくま新書)
・自動販売機の文化史(鷲巣力・集英社新書)
・脳の探検(フロイド・E・ブルーム他著/監訳:久保田競・ブルーバックス)
・心と脳の科学(苧阪直行・岩波ジュニア新書)
・ヒトはなぜ、夢を見るのか(北浜邦夫・文春新書)
・脳と記憶の謎(山元大輔・講談社現代新書)
・どうしてものが見えるのか(村上元彦・岩波新書)
・心はどのように遺伝するか(安藤寿康・ブルーバックス)
・ヒト型脳とハト型脳(渡辺茂・文春新書)
・ヒトゲノム(榊佳之・岩波新書)
・新しい発生生物学(木下圭+浅島誠・ブルーバックス)
・生命と地球の歴史(丸山茂徳+磯崎行男・岩波新書)
・カンブリア紀の怪物たち(サイモン・コンウェイ・モリス/訳:木下智子・講談社現代新書)
・原子(もの)が生命(いのち)に転じるとき(相沢慎一・カッパ・サイエンス)
・ハゲ、インポテンス、アルツハイマーの薬(宮田親平・文春新書)
・ドーピング(高橋正人+立木幸敏+河野俊彦・ブルーバックス)
・「健康常識」ウソ・ホント55(前野一雄・ブルーバックス)
・ぼくらの昆虫記(盛口満・講談社現代新書)
・森はよみがえる(石城謙吉・講談社現代新書)
・ミミズのいる地球(中村方子・中公新書)
・砂の魔術師アリジゴク(松良俊明・中公新書)
・昆虫の誕生(石川良輔・中公新書)
・ゾウの時間ネズミの時間(本川達雄・中公新書)
・原子爆弾(山田克哉・ブルーバックス)
・日本の医療に未来はあるか(鈴木厚・ちくま新書)
・地球はほんとに危ないか?(北村美遵・カッパ・サイエンス)
・不妊治療は日本人を幸せにするか(小西宏・講談社現代新書)
・生殖革命と人権(金城清子・中公新書)
・日本の科学者最前線(読売新聞科学部・中公新書ラクレ)
・100円ショップで大実験!学研の「科学」「学習」編・学研)
・日本人のひるめし(酒井伸雄・中公新書)
・栽培植物と農耕の起源(中尾佐助・岩波新書)
・漬け物大全(小泉武夫・平凡社新書)
・カレーライスと日本人(森枝卓士・講談社現代新書)
・魚々食紀(川那部浩哉・平凡社新書)
・万博とストリップ(荒俣宏・集英社新書)
・私の選んだ一品(阪急コミュニケーションズ)
・グッドデザイン賞審査委員コメント集1(日本産業デザイン振興会編・GD新書)
・広告のヒロインたち(島森路子・岩波新書)
・マジックは科学(中村弘・ブルーバックス)
・元禄御畳奉行の日記(神坂次郎・中公新書)
・武士の家計簿(磯田道史・新潮新書)
・参勤交代(山本博文・講談社現代新書)
・百姓の江戸時代(田中圭一・ちくま新書)
・花と木の文化史(中尾佐助・岩波新書)
・住まい方の思想(渡辺武信・中公新書)
・誰か「戦前」を知らないか(山本夏彦・文春新書)
・日本一周ローカル線温泉旅(嵐山光三郎・講談社現代新書)
・オートバイ・ライフ(斎藤純・文春新書)
・新「親孝行」術(みうらじゅん・宝島社新書)