【244】 ◎ 多田 道太郎 『身辺の日本文化 (1988/07 講談社学術文庫) 《身辺の日本文化―日本人のものの見方と美意識』 (1981/01 講談社ゼミナール選書)》 ★★★★★

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身近な切り口で、楽しみながら「日本人の意識構造」がわかる。

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身辺の日本文化.jpg 多田 道太郎.jpg 多田 道太郎 氏
身辺の日本文化―日本人のものの見方と美意識 (講談社ゼミナール選書)』〔'81年〕/『身辺の日本文化』講談社学術文庫 〔'88年〕

 NHKのフイルムアーカイブで著者が喋っているのを偶然見て、飄々とした話しぶりに惹かれ本書を手にしましたが、これが思いのほか面白い!

 食事のあと割り箸は折るのはなぜかとか、日本家屋に独特の縁側や敷居、台所の入り口にかかる暖簾(のれん)にどんな意味合いがあるのか、鳥居が赤いのは昔からか、そうした身近な切り口で日本文化の特質や日本人の意識構造を見事に解き明かしていきます。

 箸はフォークより高級であるという著者の論は、なかなか興味深くてそれなりに納得させられるけれど、著者のユーモアも少し入っているかも。「青春」や「コメカミ」の語源もこの本で知り、普段考えてもみなかったことばかり。雑学としても面白いけれど、かなり奥が深いなあと。でも、語り口は上方落語みたいですごくリズムがいいのです。

 著者の多田道太郎は仏文学者でコンサイス仏和辞典などの編纂した人ですが、社会学者、詩人、俳人、現代風俗研究会の会長でもあった人です。こんな人はもう世に出ないでしょう。とっつきやすく、読んで損しない本(何か得するわけでもないですが)、楽しい本です。

 【1981年単行本〔講談社〕】

《読書MEMO》
●箸は高級、フォークは野蛮(手の形に近い)(16p)
●割り箸はなぜ折るのか...箸と茶碗は自分個人に帰属する(18p)
●パリの家庭で主人がパンを切ってもてなしてくれる(日本人はわざわざ主が、と喜ぶ)が、パンを切るのは家長の証だから(22p)
●「玄」という字は水平線に浮かぶ船の帆(ちらちら見えるもの(30p)
●「がんばる」は「我意を張ること」、お互いに頑張ろう→集団的個人主義(西洋人には理解しづらい)(61p)
●縁側と軒端は「つながり」を、「のれん」と「敷居」は「けじめ」をあらわす(65p)
●朝行って、自分の椅子に誰かが座っていると気持ち悪い→その場合の椅子は、身体、身体の周囲1〜2m、に次ぐ第三の境界(74p)
●鴨長明『発心集』寺を譲るから女を世話してくれといって出奔した坊さんが、実は隠居所で修行していた(150p)
●鳥居が赤いのは中国の影響、もともとお社のみだった(お屋代も仮の姿。本体はもっと神聖なもの)(162p)
●酒は女性がつくり(米噛み→コメカミ)管理していた(178p)
●中国の4原色と四季...青春・朱夏・白秋・玄冬(36p)

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多田道太郎(ただ・みちたろう)フランス文学者。2007年12月2日死去。83歳。

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