「●地誌・紀行」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【239】 多田 富雄 『ビルマの鳥の木』
見ても良し、読んでも良しの充実した内容(特に芸術面)。
『スペイン』['92年/新潮社]/アルハンブラ宮殿(グラナダ)/サン・フェルミン祭ほかスペインの祭の紹介(本書)
サグダラ・ファミリア(バルセロナ)/アルカサル(セビリャ)
海外に旅行し、または滞在する際に、少しでもよくその国の歴史や文化を知っておけば、その旅行や滞在の意義もより深いものになるかと思いますが、このシリーズはそうした要望に充分応えるものだと思います。
自分の場合、スペイン旅行に行く前に本書『スペイン』を購入したのですが、同シリーズは全10巻となっていて、他に「アメリカ」「イギリス」「ドイツ」「フランス」「イタリア」「インド」「韓国」「中国」「ロシア」があり、1冊3千円ぐらいと価格的に安くはないけれど、本当に内容は価格に見合ったものであったと思いました。
全編に美しいカラー写真が多用されていてガイドブックとしても楽しめ、また多くの専門家グループによる執筆内容は広範囲にわたり奥行きも深いものです。
関連書籍案内、旅行会話、歴史年表、人名索引などが付録されているのも丁寧です。それとは別に総索引もあります。
帰国後も書棚の1冊として写真を楽しむのも良いし、その内容に再度触れるのも良いです。
本書『スペイン』は、「歴史・地理」「芸術」「生活・風俗」の3部構成で、いずれも密度の濃い内容ですが、特に「芸術」については、美術、建築、文学演劇から音楽、映画まで広く網羅し充実しており、建築に関して言えば、ガウディの「サグダラ・ファミリア」もスゴイけれども、アンダルシア地方に特に多く見られるイスラム建築も、それにも増してスゴイなあと、構造解説などを読んで改めて感心しました(とりわけ「アルハンブラ」と「アルカサル」は驚異的なまでの構造美)。
スペインを舞台に描いた外国作家や外国映画まで紹介されていて、映画ファンには大変参考になります。
それにしても、ベラスケス、ゴヤ、グレコ、ピカソ、ミロ、ダリからアントニオ・ガウディ、パブロ・カザルス、アンドレス・セゴビア、ナルシソ・イエペス、プラシド・ドミンゴまで、この国は世界的芸術家・巨匠の宝庫であると改めて感じさせられます。