【227】 ○ 宮田 律 『中東 迷走の百年史 (2004/06 新潮新書) ★★★★

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短時間で、中東関連ニュースに対する理解を深めたい人にピッタリ。

中東 迷走の百年史.jpg  『中東 迷走の百年史』 新潮新書 〔04年〕

 高校の世界史の授業というのは、どうしても西洋史中心で、さらには、近現代史をやる頃には受験期に入っているので、最後は殆ど駆け足で終ってしまう―、その結果「中東の近現代史」などは、習った記憶すら無いという人も多いのではないでしょうか。

 ところが今や、海外から伝わる政治的紛争やテロのニュースには、中東乃至はイスラム過激派に関するものが非常に多いという状況で、今までの経緯が分からないから、関心もイマイチ湧かない、ということになりがちかも。
 でも、そうした背景を少しでも知って、ニュースに対する理解を深めたいという人に、本書はピッタリです。
 200ページ前後の新書で活字も大きく、さほど時間をかけずに読めるのが特長です。

 イラク、イスラエルとパレスチナ、サウジアラビアとイエメン...など12の国や地域をあげ、国を持たない中東最大の少数民族「クルド」もとりあげていて、それぞれの歴史や現況をコンパクトに解説していますが、こうして見ると紛争の火種が絶えない地域ばかりで、まさに「迷走」の歴史です。
 
 植民地時代や米ソ冷戦時代の「負の遺産」や、国家権力者の専横もさることながら、国際テロ組織の暗躍がこうした紛争に暗い影を投げかけていることがよく分かります。
 アフガン戦争の時に、米国とともに対ソ抗戦したイスラム原理主義者の一部が、イスラム過激派として9・11テロの実行犯などに流れていったことに、歴史の皮肉を感じます。
 サウジ、アフガン、東アフリカと場所を移しつつテロリストを養成しているオサマ・ビンラディンは、ある意味、独裁国家の元首よりタチが悪いかも。

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