【215】 ○ 立花 隆 『臨死体験 (上・下)』 (1994/09 文芸春秋) ★★★★

「●超心理学」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【919】 小池 壮彦 『心霊写真
「●脳科学」の インデックッスへ「●た 立花 隆」の インデックッスへ

とりあえず死に際のことを心配するのはやめようという気持ちになった。

臨死体験 上.jpg臨死体験.jpg 臨死体験 下.jpg  Elisabeth Kübler-Ross.gif 
臨死体験〈上〉 (文春文庫)』['00年]/『臨死体験〈上〉 臨死体験〈下〉』(1994/09 文芸春秋) Elisabeth Kübler-Ross

 体外離脱などの臨死体験は、「現実体験」なのか「脳内現象」に過ぎないのか―。著者の基本的立場は脳内現象説のようですが、自分もこの本を心霊学ではなく超心理学の本として読みました。

 石原裕次郎の体外離脱経験、ユングの青い地球を見たという話など面白く、さらに終末医療の権威エリザベス・キューブラー=ロス(1926‐2004)がその著『死ぬ瞬間』('71年/読売新聞社、'01年/中公文庫)の中で書いているという「私は〈プレアセス星団〉まで行ってきました」という話には結構ぶっ飛びました。〈プレアセス星団〉って昴(すばる)のことです(一方で精神科医としてのキューブラー=ロスはターミナル・ケア第一人者であり、同じ『死の瞬間』の中で展開したの「死の受容のプロセス(否認・隔離→怒り→取引→受容)」理論は有名である)。

 臨死体験の内容の共通性はよく知られていますが、日本と海外の違い、経験者の死生観に与えた影響や、電気感受性の高まりなど生理的変化の報告までとりあげられて、「脳内現象」派の人にも興味深く読めると思います。

  心強かったのは、臨死体験の恍惚感に対する脳内麻薬説。
 死の恐怖には"死ぬ瞬間"に対する恐怖の占める比重がかなりあると思いますが、このエンドルフィンの部分を読んで、創造主の意思が働いているかのような不思議さを感じるとともに、とりあえず死に際のことを心配するのはやめようという気持ちになりました。
 それが、この本から得た最大の成果でした。

 【2000年文庫化[文春文庫(上・下)]】

《読書MEMO》
●体外離脱は脳内現象か現実体験か
●エリザベス・キューブラー=ロス...『死ぬ瞬間』ターミナル・ケア第一人者・精神科医、体外離脱でプレアデス星団へいった????
●レイモンド・ムーディ(医学博士)...『かいまみた死後の世界』'75(文庫上19p)
●ケネス・リング(現実体験説)......『オメガに向かって』 臨死体験者の宗教観の変化→精神的進化論(文庫上263p)
●キルデ(医学博士)...『クオラ・ミヲラ』 自己催眠による体外離脱・自動書記で本を書く・UFOとの出会い、宇宙人に医学検査される
●『バーバラ・ハリスの臨死体験』(立花隆訳)
●体外離脱=石原裕次郎も臨死体験者、ユングは青い地球を見た(文庫上53-57p)
●ユーフォリア...臨死体験中の恍惚感(文庫上129p)
●恍惚感のエンドルフィン説(脳内麻薬物質)...夏目漱石の臨死体験(文庫上131p)
●臨死体験者の電気感受性の高まり(ケネス・リングの報告)(文庫上363p)
●入眠状態での創造性開発:湯川秀樹など(文庫下71p)
●ドッペルゲンガー現象(自己像幻視=もう一人の自分を見る)(文庫下160p)
●前頭葉てんかん等の脳内現象説に対する現実体験説の最後の拠り所→体外離脱しなければ見えないものを見てきた事例←真偽判定

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1