【205】 ◎ 大原 健士郎 『夢の世界99の謎―もう一人の自分を知るために』 (1975/11 サンポウ・ブックス) 《『夢の不思議がわかる本』 (1992/11 知的生きかた文庫)》 ★★★★☆ (○ ウィリアム・C・デメント (大隈輝雄:訳) 夜明しする人、眠る人』 (1975/01 みすず書房) ★★★★)

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夢の謎を科学的に解説し、様々な夢解釈法を紹介した楽しい本だった。

夢の世界99の謎AE.jpg
『夢の世界99の謎』 サンポウ・ブックス job37_2.jpg 大原 健士郎 氏 (略歴下記)

Dream.jpg  現代の生理学の常識としては、夢を見ない人はいないと言われていて、赤ちゃんでも夢を見るし、赤ん坊の寝ているときの眼球の動きから、所謂"夢見"の状態であるREM(rapid eye movement)睡眠が見つかったことは有名です。

 本書は、日本の自殺研究の権威・大原健士郎氏の著作ですが、自殺の研究を始める前から夢の研究に強い関心があったとのことです。
 「夢で発明や発見ができるか」「正夢や予知夢はあるか」といった素朴な疑問に、科学的見地に立って回答するとともに、夢の解釈について、フロイトや、それを批判したアドラー、ユング、フロムらの考えをわかりやすく解説しています。

夜明かしする人、眠る人.jpg また、夢の生理学的側面についても、「動物から眠りを奪うとどうなるか」といった疑問に答えるところから始まり、睡眠時無呼吸やナルコレプシーについても解説しています。
 様々な歴史的人物が行った夢の謎解きや、夢とテレパシーの関係についての考察などもあって、読みどころ満載の楽しい本です。

 更には、アメリカ流反フロイト主義の中でも、本書出版当時としては新しい、アン=ファラデー女史の『ドリームパワー』ウィリアム・C・デメント『夜明かしする人、眠る人』などにある研究成果や、フレデリック・パールズ「ゲシュタルト療法」の立場での夢解釈などがわかりやすく紹介されているのも、本書の特長です(アン=ファラデー、W・C・デメントとも、夢に対するプラグマティックな姿勢がうかがえる。デメントの『夜明かしする人、眠る人』には、著者が肺がんになった夢を見たことでタバコをやめた話などが出てくる。読み物としてもたいへん面白い本)。

夜明しする人、眠る人』['75年/みずず書房]
                                                   
夢の不思議がわかる本.jpg このサンポウ・ブックスのシリーズは他にも『幻の古代生物99の謎』など良いものがあり、絶版となった今は、その一部が古書市場で高値になっているとのことです。
 ただし本書については、「知的生きかた文庫」に『夢の不思議がわかる本』('92年)として、ほぼ同じ内容で移植されています。

 『夢の不思議がわかる本』 知的生きかた文庫 ('92年)

《読書MEMO》
●「黄梁一炊(こうりょういっすい)の夢」「邯鄲の夢」...盧生(ろせい)が宿で栄華が思いの儘になるという枕で寝ると皇帝になって50年世を治め、さらに不老長寿の薬を得る夢を見るが、それは黄梁(粟飯)が炊ける間の事だった(34p)
●ゲシュタルト療法(フレデリック・パールズ)...自由連想法(精神分析)は問題の周辺をぐるぐる回るだけで自己の神経症に直面することを避ける自由分裂に過ぎない。(ゲシュタルト療法では)集団の中で自分自身の夢を語るという方法で、自身の表情、声の調子、姿勢、身振り、他人に対する反応に患者の注意を向けさせ、その人の人格の欠陥をさがし、気づかせるとともに治療に応用する(157p)

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大原健士郎 (精神科医)
1930年、高知県伊野町生まれ。東京慈恵医大大学院博士課程修了。六六年、ロサンゼルス自殺予防センター特別招聘(しょうへい)研究員として、一年間留学。七七年、浜松医大教授。神経症の治療法として知られる森田療法のほかアルコール依存、薬物依存なども研究テーマ。「精神医学はまだ科学の名に値しない」が持論。

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大原 健士郎
精神科医。浜松医科大学名誉教授。
自殺研究の第一人者として知られ、森田療法の継承者であり、著書も多数にのぼる。2010年1月24日、膀胱癌のため入院していた浜松市内の病院にて多臓器不全のため死去(79歳)。

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