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「ABC理論」などをわかりやすく丁寧に説くオーソドックスな入門書。
『自己変革の心理学―論理療法入門』講談社現代新書 〔'90年〕
副題にある論理療法とは、「非合理的・非論理的な思考をみつけて取り出し、それに有効な反論を加えて、次第に考え方を変えさせ、人を自滅の方向から救い出すもの」(本書)で、カウンセリング理論の一つです。
本書では"自己訓練法"というとらえ方をしていますが、カウンセリングの目的が自己実現の「援助」であり、変容するのは本人自身であることを考えれば、これが自己変革を図るための手立てにもなり得ることは納得できると思います。
論理療法でいうイラショナル・ビリーフやABC理論(ABCDE理論)をわかりやすく説くために著者の経験やマンガを引いたりしていますが、内容的にはオーソドックスで、最後に「論理療法のまとめ」と「実践のためのアドバイス」を配しており、入門書として丁寧な構成になっています。
同じく現代新書に『〈自己発見〉の心理学』('91年)という論理療法の権威・国分康孝氏の著作があり、こちらも論理療法の入門書ですが、イラショナル・ビリーフに焦点を当て実生活での応用などを説いたものであるため、論理療法を体系的に知りたい人は、先に本書を読んでそのアウトラインを掴んでおいた方がよいのではと思います。
《読書MEMO》
●私は大学の教師になる以前、予備校の教師をしていたことがあるが、そこでは、「浪人までした以上、第一志望の大学に入れなければ自分の人生はもうダメだ」と思い込んでいたり、それに似た考えに固まっている学生はきわめて多かった。(中略)人間が意識的・無意識的に行っている思考には、論理的・合理的で適切に、その人の自己実現につまりは幸福な人生に導いていくものと、非合理的・非論理的な思考で、それは自分で自分をダメだと決めつけたり、その不当な思い込みに自ら縛られて二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなり、結局は人を自滅の方向へ進ませてしまうものがあるということである。論理療法とは、先に述べた後者のような、非合理的・非論理的な思考を見つけて取り出し、それに有効な反論を加えて、しだいに考え方を変えさせ、人を自滅の方向から救い出し、人がよりよき自己実現、幸福な生活に向かうのを援助しようとする(12p)
●受付の対応だけで「あの病院は冷たい」...過度の一般化(19p)
●カウンセリングとは、言語的および非言語的ココミュニケーションを通して、相手の行動の変容を試みる人間関係(38p)
●諸悪の根源は非論理的な文章記述にあるというのが、論理療法のαでありω(82p)
●適切な感情を自分のものとする(176p)
●ABCDE理論...
・A(Activating event)
・B(Belief)
・C(Consequence)
・D(Dispute)
・E(Effect)