【193】 ○ 池見 陽 『心のメッセージを聴く―実感が語る心理学』 (1995/03 講談社現代新書) ★★★★

「●来談者中心療法」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【194】 東山 紘久 『プロカウンセラーの聞く技術
「●講談社現代新書」の インデックッスへ

フォーカシング入門書。ロージャーズ理論入門としても読め、奥も深い。

心のメッセージを聴く.jpg心のメッセージを聴く2.gif 『心のメッセージを聴く―実感が語る心理学』 〔95年〕 photo_ikemi2.jpg  池見 陽(あきら) 氏 (略歴下記)

季節・夏.jpg 本書自体は、E・ジェンドリンにより「心の実感」に触れるための方法として開発された「フォーカシング(focusing)」の技法について解説した入門書ですが、「フォーカシング」は、ジェンドリン自身が彼の師にあたるC・ロジャーズとのカウンセリングの共同研究を通して、その成功・不成功例の比較からから開発した技法であるため、本書ではそのベースとなった「ロジャーズ理論」(来談者中心療法)の解説もなされています(著者自身もジェンドリンの弟子であると同時に、ロジャーズの孫弟子にあたる)。

 自分自身、何気なく手にした本書で初めて、ロジャーズのカウンセリング・マインド(「一致」と「不一致」、「共感的理解」、「無条件の肯定的関心」)の何たるかを知ったわけで、それまで来談者中心療法のクライエント役になった経験などがあったにも関わらず、その本質がわからないでいました。
 そうした意味では来談者中心療法の入門書としても読め、同時に、より広い意味でのカウンセリング・マインドとは何かを知る上でも参考になると思います。

 失敗したカウンセリングとは「心の実感」からのメッセージを引き出すことに失敗しているのであり、〈フォーカシング〉は、(1人でも出来ますが)自分の内側に感じられる「心の実感」に触れ続け、停滞した心を開いて、成長や創造性的問題解決を図るものです。
 本書は事例を挙げてわかりやすく書かれているものの、かなり奥が深く、(1人でも出来るとは言え)より実践を経ないと本当に理解できないのではと思われる面もありました。

 ただ、技法論としての、冒頭において「開かれた間をおく」というやり方は、何か禅的でもあり興味深く、日常生活でも応用が可能な気がしました。
 人間存在を、心身一元論・二元論を超えて、私とは体の「内」にいるのでも「外」にもいるのでなく「関係的な存在である」と捉える考え方は、実存主義の「世界-内-存在」に通じるものですが、「体験」も"関係"であり、ある事柄にフォーカシングすることで、その事柄に関する暗在的な"関係"が「からだ」の実感として体験されるというのは、流行の"身体論"的人生論を超えた高次の自己探求法に繋がるものかも知れないと思いました。
 
 尚、フォーカシングを来談者中心療法とは別個の体系(フォーカシング指向心理療法)として捉える見方もあることを付記しておきます。
_________________________________________________
池見 陽(医学博士)
臨床心理士で専門はフォーカシング指向心理療法。現在、関西大学教授で、大学での教育研究のほか、臨床は自動車メーカーの健康保険組合で行っている。日本フォーカシング協会会長、日本人間性心理学会理事、兵庫県臨床心理士会理事や The Focusing Institute の認定コーディネーター。

About this Entry

This page contains a single entry by wada published on 2006年8月19日 12:28.

【192】 ○ 平木 典子 『カウンセリングの話 [新版]』 (2004/01 朝日選書) ★★★★ was the previous entry in this blog.

【194】 ◎ 東山 紘久 『プロカウンセラーの聞く技術』 (2000/09 創元社) ★★★★★ is the next entry in this blog.

Find recent content on the main index or look in the archives to find all content.

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1