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カウンセリングの入門書であり名著。ゆっくり読みたい。
『カウンセリングを語る〈上〉・〈下〉』講談社+α文庫['99年](表紙絵:安野光雅)
本書は、著者がかつて四天王寺人生相談所(お寺の付属機関)で毎年カウンセリングの話をした、その通算20回の講義内容がベースになっています。
元本(単行本)は'85(昭和60)年に出版されたものですが、それまでに長年にわたって話した内容が全体として一貫性を持ち、しかも章を追うごとに深化していくのは見事です。入門書であり、名著でもあると思います。
上巻では、学校や家庭での身近な問題から説きおこし、心を聴くとは? カウンセラーの人間観とは? 治るとは? カウンセリングの限界とは? 危険性は?といった切り口で、カウンセリングとは何かを語っています。
さらに下巻では、カウンセリングにはなぜ「××派」などがあるのかという話からその多様な視点と日本的カウセリングを考察し、カウセリングを行う際の実際問題とその対し方を述べ、最後は死生観や人生観にまで突っ込んだ話となっています。
著者はカウンセリングが宗教に通じるものがあることを肯定していますが、この本自体が"法話"のような趣があります。
本書を読むことは、〈知識的〉読書というより〈体験的〉読書とでも言うべきでしょうか。
文庫上・下巻で600ページを超えますが、ゆっくり読みたい本です。
【1985年単行本[創元社 (上・下)]/1999年文庫化[講談社+α文庫 (上・下)]】
安野光雅(画家・装幀家・絵本作家)
2020年12月24日逝去。94歳。