【185】 ○ 金井 壽宏 『会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング (2003/08 日本経済新聞社) ★★★★

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キャリア行動の専門家とプロ・キャリアカウンセラーのコラボ。個人的には良かったが...。

キャリアカウンセリング58.JPG会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング.jpg        金井壽宏.jpg 金井壽宏 氏
会社と個人を元気にするキャリア・カウンセリング』 ('03年)

 組織には組織の価値観や規則があり、社員が組織にとって望ましい発想や行動パターンをとってくれて、なおかつそれが社員にとっても元気の源となり自己実現につながるならば、そらは素晴らしいことでしょう。しかしなかなか現実にはそうはいかない...。

SPRACHCAFFE Business.bmp 個人は当然、自らのキャリアや価値観を重視するわけで、そうしたなかで企業は、企業のアイデンティと個人のアイデンティの調和をいかに図るかが大きな課題になってくるに違いなく、そのことを意識した場合において(まだそういう意識を持てないでいる企業経営者も多いけれど)、キャリアカウンセリングというのは会社生活と個人生活を調和した状態に近づけるひとつの手立てになると思われます。

 本書はキャリア行動などが専門の金井壽宏教授と、プロのキャリアカウンセラー(臨床心理士)らの共著ですが、上述の問題に一歩でも迫ろうという意欲は感じられます。 
 金井教授が冒頭で最近とりあげられることの多いミドルの課題を提示し、以降カウンセラーがキャリア・ストレスやミドルの危機、カウンセラーの役割などについて1章ずつ述べ、後段で金井教授がリーダーシップやトランジッションについて述べています。

アイデンティティ.jpg 岡本祐子氏の「アイデンティの螺旋式モデル」は厚労省のキャリア・コンサルティング技法報告書にも採用されたものであるし、「成人期の発達を規定する2軸・2領域」論は是非多くの人に触れて欲しいものです。
 渡辺三枝子氏のキャリア・カウンセラー論も素晴らしい内容でした。
 全体的にはバラエティに富んだ、意欲的かつ面白いコラボレーションだと思います。

 ただし少しケチをつけるならば、別の章では、学術的論文を50頁以上にわたりベタで掲載して1章を構成していたりもし、この部分は"バラエティ"と言うよりは"水増し"の感があり、少なくとも一般読者向けを思わせるタイトルとは相容れないのではないでしょうか。

《読書MEMO》
●客観的キャリアと主観的キャリア(意味づけ・将来展望)(10p)
●ワーク・ファミリー・コンフリクト(仕事と家庭の間で生じる葛藤)(39p)
●成人期の発達を規定する2つの軸と2つの領域-職業人・組織人・家庭人・自立(自律)した個人(岡本祐子)(61p)
 ・人としてのアイデンティの達成-職業人としての有能性
 ・組織に対するケア-後進の指導育成・組織の人間関係への主体的関与
 ・家族に対するケア-親役割・夫役割
 ・一人の人間、生活者としての自立/自律性

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