【163】 △ 杉田 敏 『人を動かす! 話す技術 (2002/07 PHP新書) ★★☆

「●プレゼンテ-ション」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【164】 藤沢 晃治 『「分かりやすい説明」の技術
「●PHP新書」の インデックッスへ

明日プレゼンを控えた人が読んでも役に立たないのでは。

人を動かす! 話す技術.jpg人を動かす! 話す技術』PHP新書〔'02年〕 sugita.jpg 杉田 敏 氏(プラップジャパン副社長) 

070110.jpg 著者はNHKラジオ「やさしいビジネス英語」の講師として知られるとともに、外資系のPR会社の副社長でもあります。ですから、基本的にはプレゼンテーションの本でありながらも、コミュニケーションということを広く捉え、その中での広告、オンライン、対面、媒体を使った様々なコミュニケーションの、それぞれのポイントの説明がなされており、内容的にも的を射ています。
 
 また、送り手(S)からメッセージ(M)がチャネル(C)を通して受け手(R)に流れるだけでなく、そこに受け手がアクションを起こすという効果(E)が生まれなければならないとする「SMCRE理論」や、エトス(信頼)、ロゴス(論理)、パトス(感情)からなる「説得の3要素」の説明もわかりやすいものでした。

 「エトス」による説得とは話し手の人格や資質により相手の信頼を得るものであり、「ロゴス」による説得とは論理を積み重ねて相手を納得させるもの、「パトス」による説得とは聞き手の感情に訴える説得ということで、哲学者アリストテレスが定義した「成功するコミュニケーション」が典拠であることは知られているところです。この中で「エトス」を重視しているのは、米国のコミュニケーション学の潮流を引いたものだと思いますが、「ロゴス」第一主義だった米国人の反省が、「パトス」重視の日本人にも生きるという"妙"を感じました。

 自らの豊富なビジネス経験やアイアコッカ、ブッシュのエピソードまで引き合いに出しての話には引き込まれます。ただ個人的には、プレゼンに役立つかなと思って本書を手にしたため、その部分ではたいしたことは書いてない不満が残りました。明日プレゼンを控えた人が読んでもそれほど役に立たないのではと思います。著者の専門分野はNHKラジオで講師をしているように「実践ビジネス英語」であり、その専門家がプレゼンの本も書いてみたといった印象はあります。

 日本の経営トップやリーダーと呼ばれる人は、もっと表現訓練をした方がいいのかも、という感想のみが残りました。それが、"メディアトレーナー"でもある著者の狙いだったのかも。

《読書MEMO》
●朝日新聞 2021年3月18日夕刊:ラジオの中の恩師、別れの春 杉田敏さんのNHK「実践ビジネス英語」、34年の歴史に幕
「実践ビジネス英語」、34年の歴史に幕.jpg

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1