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コミュニケーションの指南書。エトス(精神性)の高い本。
『伝わる・揺さぶる!文章を書く』PHP新書〔'01年〕 山田ズーニー氏(略歴下記)
ちょっと引き気味になりそうなタイトルですが、読んで見るとなかなかでした。
著者はあの進研ゼミのベネッセ・コーポレーションで、小論文通信教育誌の編集長をしていた女性です。
しかし内容は、小論文に限らず、上司を説得する文章、お願いの文章、議事録、志望理由(自己推薦)の文章、お詫び文、メールの書き方など、高校生の試験向けというよりは、ビジネスシーンでの実践的活用に即したものとなっています。
しかも、文章(著者は実用以上、芸術未満と規定していますが)を書く上でのテクニックにとどまらず、"伝わる・揺さぶる"文書を書く上での根幹となるものを示唆していて、むしろコミュニケーション全般にわたる指南書とも言えます。
書かれていることに読者をアッと言わせようというような作為性はなく、「自分を偽らない文章を書くことによってのみ、読み手の心は動く」のだという著者の考えが、そのまま真摯な語り口で実践されている本です。
こうした本は頭で理解できても、なかなか実践は難しいもの。
特に著者の言う「自分の頭でものを考える」ということ。何か忘れた気持ちになったとき、また読み返してみるのも良いかも。読み返す価値のあるエトス(精神性)の高い本だと思います。
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山田ズーニー (コミュニケーション・インストラクター)
1984年ベネッセコーポレーション入社。進研ゼミ小論文編集長として高校生の「考える力・書く力」の育成に尽力。
2000年に退社。同5月より「ほぼ日刊イトイ新聞」に「おとなの小論文教室。」を連載。
以降、執筆、講演、編集長・ライターの育成など文章表現教育を幅広く行うようになる。