【136】 △ 太田 肇 『ホンネで動かす組織論』 (2004/04 ちくま新書) ★★★

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企業に見られる組織心理のダイナミズムを解き明かしてはいるが...。

ホンネで動かす組織論.jpg  『ホンネで動かす組織論』 ちくま新書 〔'04年〕 photo_ota.jpg 太田 肇 氏

 本書は3部構成になっていて、第1部「なぜ、やる気がでないのか」、第2部「ホンネの抑圧が組織を滅ぼす」において企業や組織におけるタテマエとホンネの乖離とその弊害を説き、第3部で「ホンネからの組織づくり」、つまり旧来の「全社一丸」的な"直接統合"ではなく、「個人が組織の一員でありながら、組織と同じ目標を追求する必要はない」という"間接統合"の考え方を提唱しています。

 組織における人の行動や人間関係についてのさまざまな事例やエピソードには非常に頷かされるものが多く、著者が一般企業などで見られる組織心理のダイナミズムに精通していることがわかります(さすがサラリーマン経験者!)。
 
 一方、提案部分の方は、「内発的動機づけ」(高橋伸夫『虚妄の成果主義』などでも強調されていましたが)など仕事の「面白さ」を重視しすぎるのを戒め、むしろ「目立ちたい」といった承認願望など「健全な利己心」をベースに動機づけを図ることを提唱しています。

 全体を通して読みやすくスラスラと読めてしまいますが、「タテマエ・ホンネ論」というのは意外と、どこまでがタテマエでどこまでがホンネなのかわかりにくく、またタテマエがすべて弊害とは言い切れない部分もあり、その点本書は、やや問題を単純化しすぎた「タテマエ・ホンネ論」になっているのも否めないのではないかと思いました。

《読書MEMO》
●いかに会社に貢献するかよりも、いかに自分が評価されるかが関心事(48p)
●有給休暇の権利を行使しないことは、サービス残業と同じように、やる気をアピールする手段になる。(54p)
●やる気をみせるためのファザード(演技)は組織にとっても社員にとっても有害でこそあれ何の価値も無い、一種の病理現象(中略)。演技を続けるうちにタテマエがホンネに近づくという奇妙な現象が起きている(57p)
●いくら会社が情報を共有するように呼びかけても、その価値に見合う対価が得られない限り、積極的に情報を出そうとはしなくなる。(67p)
●私用を優先させたければ、仕事上の理由を装うことが必要になる。(94p)
●「私」より「公」が優先される組織では、個人はホンネを隠そうとする(98p)
●タテマエの行使を控える会社や管理者に対し、社員は協力的な姿勢や打算を超えた貢献によって報いようとする。(120p)

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