【135】 ○ 橋本 治 『上司は思いつきでものを言う (2004/04 集英社新書) ★★★☆

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「組織心理学」から「組織論」、「文化社会学」的な話へと展開。

上司は思いつきでものを言う (集英社新書).jpg上司は思いつきでものを言う.jpg 橋本 治.jpg 橋本 治 氏 (略歴下記)
上司は思いつきでものを言う』 集英社新書 〔'04年〕

 このタイトルに、誰もが自分の会社のことだと思うのではないでしょうか。著者独特のやや回りくどい言い回しも、本書に関しては「そうだ、そうだ」というカタルシスの方が勝り、それほど気になりませんでした。

 「埴輪の製造販売」会社での会議の例え話で、「埋葬品でなく美術品としての埴輪を」という部下の提案に対し、上司の「いっそ、ウチもコンビニをやろう」というトンチンカン発言に会社の決定が靡いていく様は、企業の中にある「ありふれた不条理」をうまく描いていると思いました。

 著者によれば、結局、上司とは現場という"故郷"を離れ、管理職という"都会"に住む先輩で、田舎の青年団の後輩(部下)が持ってきた村おこしプラン(企画)に対し、故郷をバカにしている先輩はアラ探しをし、故郷を愛し過ぎている先輩は、自分も青年団の一員になったような錯覚に陥り、いずれの場合も「思いつきでものを言う」のであると。

 「組織心理学」の話かと思い読み進むと、日本の会社の下から上への流れがない組織的特徴を指摘する「組織論」そのものの話になり、さらに中国から伝わった儒教が日本的変容を遂げて、官僚や企業組織の中にどのように反映されたかという、「文化社会学」的な話になってきます。
 
 確かに本書については、前書きにサラリーマン社会の欠点を書こうとしたとあるように、そのあたりが著者の最も言いたかったことなのかも知れませんが、こうした歴史文化論的分析に対しては、賛否が割れるとかも知れません。

 一方、こうした困った上司への対処法としては、その場で「ええーっ」と呆れればいいと。
 個人的には、このやり方自体にさほど現実味を感じず(実践している人はいるかも知れないが)、これらも含めて、そういう下からの声が無さ過ぎるのだという著者の批判の一形態としてこれを捉えた次第です。
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橋本 治(はしもと おさむ)
1948年、東京生まれ。作家。東京大学文学部国文科卒。77年『桃尻娘』で講談社小説現代新人賞佳作受賞。以後、小説、評論、戯曲、古典現代語訳、エッセイ、芝居の演出等で幅広い創作活動を続ける。主な著作に『江戸にフランス革命を!』『窯変源氏物語』『ひらがな日本美術史』等。『宗教なんかこわくない!』で第9回新潮学芸賞、『「三島由紀夫」とはなにものだったのか』で第1回小林秀雄賞を受賞している。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月16日 22:48.

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