【131】 ○ ジャン=フランソワ・マンゾーニ/ジャン=ルイ・バルスー (平野誠一:訳) 『よい上司ほど部下をダメにする (2005/01 講談社) ★★★★

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色眼鏡で部下を見がちな「失敗おぜん立て症候群」の上司に自省を促す書?

よい上司ほど部下をダメにするド.jpgよい上司ほど部下をダメにする.jpg      The Set-Up-To-Fail Syndrome.jpg
よい上司ほど部下をダメにする』〔'05年〕  The Set-Up-to-Fail Syndrome: How Good Managers Cause Great People to Fail (Hardcover)

 原題は"The Set-Up-To-Fail Syndrome"で、本文では「失敗おぜん立て症候群」と訳されていますが、この方がタイトルの「よい上司ほど部下をダメにする」よりも内容を分かり易く端的に表しているかと思います。

 つまり、マネージャー(上司)というものは部下に対してレッテルを貼りがちで、いったん「できない部下」というレッテルを貼ると、部下の自信を平気で傷つけたり余計なアドバイスをしたりし、また頻繁に報告を求め、細かいチェックを入れるため、ますますその部下のヤル気を削ぎ、自主性を抑えてしまいがちであり、いわば「失敗のおぜん立て」をしているようなものであるという、その1点に絞って本書は書かれています。

  「できない部下」に悩まされながらもどこかで「できないままでいて欲しい」という願望があり、自分が下してきた評価をいまさら変えたくないので、たまにいいことをしても認めようとしないなどの鋭い見方も示されていて、多くの管理者が読んで冷や汗をかく部分もあるかもしれません。

 確かに「できない部下」をそのままにしておくことは、これからの人材難の時代に業務効率に多大のマイナスを及ぼすに違いないと思います。
 本書で示されている解決の方法は、やはりコミュニケーションを密にするということで、このあたりにはあまり目新しさは感じませんが、言いたいことは「よい上司」より「尊敬される上司」になれ(メンターを志向せよ)ということでしょうか。
 事例が数多くとり上げられているので、過去の経験を想起しつつ、自分に言い聞かせるように熟読すれば、上司にとってそれなりの自己変革(自省)効果はあるかも(そのためには先ず謙虚にならなければ)。

 アメリカで80年代から今日まで数多く書かれている組織心理学の本のような印象を受けますが、この本を書いているのはスイスのローザンヌに拠点を置く世界トップクラスのビジネススクールIMDの教授らで、こういうテーマのもとに事例を集めて論理的に整理していくところはやはり欧米的な感じがします。
 上司が色眼鏡で部下を見てしまいがちなものであるということは、日本も含め万国共通なんだなあという感想を持ちました。

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This page contains a single entry by wada published on 2006年8月16日 22:06.

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