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有能なゼネラル・マネジャーとは人的ネットワークの構築が上手い人?
『ザ・ゼネラル・マネジャー―実力経営者の発想と行動 (1984年)』 『The General Managers』ペーパーバック版 John P. Kotter
著者のジョン・コッターは、日本でもそのリーダーシップ論に関する著作などで知られるハーバード・ビジネススクールの組織行動論の教授ですが、本書は彼の邦訳された著作の中では比較的初期のもので(原著出版は'82年)、有能とされるゼネラル・マネジャー(GM)というものが、ビジネスの各場面においてどういった発想をし、行動をとっているのかを「精査」したものです。
様々な業種から15人のGMを選び、1人1人について、職歴・経歴・家族状況などは当然のことながら、どのような職業上の要求に応えることが求められるのか、パーソナリティや知識、対人関係はどうかなどをまず押さえたおいたうえで、職務への取り組み方はどうかをアジェンダ設定から時間の使い方まで、インタビューなどを通してこと細かく調べ、各人の間に見られる類似点や相似点を探っています。
面白いのは、そうして得られた結果が、有能とされるGMの人物像というのが、難敵を次々と倒す「カウボーイ」でもなければ、MBA資格 を有する切れ者テクノラートでもなく、人的ネットワークの構築活動に長け、ある意味そうした依存関係の中で行動しているということです(出版当初はかなりの意外性があったかも知れません)。
それにしても1人につき1ヶ月以上かけてこうしたフィールドリサーチをし、事実を積み上げて検証する、これがハーバード・ビジネススクール流であるというのが興味深いです。
要するに極めて帰納法的で、後に展開される彼のリーダーシップ論も、現場の生身のリーダーをしっかり見てきた経験の上に語るから、説得力があるのでしょう。
本書の翻訳には、後にキャリア行動を研究分野とする金井壽宏氏と、以降もコッターの著作に関わり続ける加護野忠夫氏の神戸大コンビが関わっていて(金井氏は当時まだ講師)、金井氏のずっと後の著書には、こうしたビジネス現場のフィールドリサーチを模したもの、例えば『仕事で「一皮むける」』('02年/光文社新書)などもあり、そうした点でも興味深かったです(本書の原著出版から20年後の話ですが、これが日米のこうした分野での研究の開きか)。