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面白さで言えば、ナビスコの事例が一番面白い。あとは通読でも。
『企業合併』 文春新書 〔'01年〕 『メガバンクの誤算―銀行復活は可能か』
著者は元長銀執行役員で、放漫な経営陣を批判して銀行を辞し、コンサルタントに転じてた人で、 『メガバンクの誤算-銀行復活は可能か』('02年/中公新書)などの著書もあります。
本書において、資本家や投資家の飽くなき欲望と、冷徹な資本の論理がぶつかり合うのが欧米の企業合併であるとすれば、日本のそれは、経営者の面子や旧財閥のしがらみ、行政の強引な介入などが絡んだ経済合理性の無い企業合併ばかりで、それでは経済の国際化がますます進むなかで、国際競争についてはいけなくなることを示唆しています。
前半3章でRJRナビスコ、タイムワーナー、スイス銀行といった海外の合併事例を、後半3章で三井物産・三菱商事の大合同、海運大再編、新日鉄など国内の事例を取り上げています。
読んで面白いのは海外のもので、とりわけRJRナビスコの、〈経営陣によるMBO〉vs.〈投資顧問会社によるLBO〉の対決劇と、その後フィリップ・モリスに買収されるまでの顛末を追った第1章の「タバコとビスケット」は、スケールの大きさと逆転に次ぐ逆転劇で引き込まれるように読めます。
LBO、ゴールデン・パラシュート、ベア・ハッグ、TOB、白馬の騎士といった要素がすべてこの章に盛り込まれていて、その用語が出てきたところで著者が簡潔な解説を挟んでいるため、今まであまりこうした用語に縁の無かった自分の頭にも、その意味がすんなり入ってきました。
ただ、後半の日本の合併劇は、著者自身が言うように"あまりドラマがない"もので、その狙いもスケールメリットを図るという一本調子なものばかり。
一応最後まで読みましたが、ナビスコの章だけじっくり読めば、あとは通読でよかったかも知れません。