【121】 ○ 梅田 徹 『企業倫理をどう問うか―グローバル化時代のCSR』 (2006/01 NHKブックス) ★★★★

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企業のグローバル化とCSRの関係を指摘するなどした良書。

企業倫理をどう問うか.jpg 『企業倫理をどう問うか―グローバル化時代のCSR』 (2006/01 NHKブックス)

 本書は、「企業の社会的責任」とは何か、「CSR」とは何か、そしてそれが「企業倫理」とどう関係しているかを読者に理解してもらい、読者が「行動」を起こすことを期待して書かれた本であるとのことで、「企業倫理」という言葉そのものの(字義的)考察は本書内では敢えてしていない、と冒頭で断ってあります。

 しかし、新聞記事に見る「企業倫理」「企業の社会的責任」という言葉の使用頻度の過去推移分析がしてあり、それがなかなか興味深く、リクルート事件で「企業の社会的責任」という言葉の使われたのを最後に('88年)、その後の'90年代の企業不祥事では「企業倫理」という言葉が使われていて、それが'04年頃からそれに代わるように、また「企業の社会的責任」がよく使われているとのこと.。
 '90年代終わり頃から使われ始めた「コンプライアンス」という語に「企業倫理」が吸収されていったフシもあるとのことですが、その理由やそうした変遷を経ての言葉の意味合いの変化なども分析もされています。
 一方「CSR」の方も曖昧性を残す言葉ですが、発祥元の欧州ではボトムラインがきっちり定められているようです。

 サブタイトルには「グローバル化」という言葉もありますが、特にグローバル企業の労働搾取や環境破壊問題が広く指摘されていて、国際企業が独裁政権と商取引の上で手を組んで、結果として環境破壊や人権侵害に間接的に関与する形になっていたり、あるいは、有名スポーツブランドのサッカーボールが、発展途上国の児童労働によって生産されていたりする―こうしたことをチェックする動きが海外のNGOなどにはあり、倫理基準(「CSR」)に抵触する製造・流通過程を経た商品は安くても買わない、そうしたことが最初に述べた「行動」するということに繋がるということです。

 著者の真摯な問題意識に貫かれている良書ですが、海外の多国籍企業の問題に限らず、国内企業の「偽装請負」なども、まさに労働搾取との批判を避けて通れない問題ではないかと思いました。

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